裁判所トップページ > 裁判所について > 広報誌「司法の窓」 > 司法の窓 第63号 > 15のいす 「検察審査会−国民の司法参加のいとぐち」
最高裁判所判事 亀山継夫
検察審査会という機関があって,検察官のした不起訴処分について審査した上,不起訴相当,不起訴不当,起訴相当などの議決をすることは,時に新聞紙上などで大きく報道されるのでご存じの方も少なくないでしょう。しかし,任期6か月の検察審査員11人が選挙人名簿を基にしてくじで選ばれる一般市民であり,審査会の事務局が裁判所におかれていることは案外知られていないかもしれません。
起訴・不起訴を決める権限を独占している検察官は,いわばその道のプロです。それに対して,審査員は,刑事事件について特段の知識も経験もない一般の市民ですから,的外れな議論をするのではないか,あるいは起訴相当などの議決をしても検察庁がまじめに取り上げないのではないかというような心配もあるかもしれませんが,決してそんなことはありません。私は,検察官在職中何件もの起訴相当・不起訴不当の議決書に接しましたが,アマチュアなのに立派なものだなと感心させられたり,一般市民の感覚は健全だなと反省させられたりすることがたびたびでした。統計的に見ても,起訴相当等の議決は毎年100件前後ありますが,そのうち30%前後の事件が検察庁の再捜査によって起訴され,その約90%弱が有罪となっており,この制度は,国民の司法参加の制度の一つとして十分機能していると評価できます。また,審査員になった人からは,ほとんど例外なく,有意義なあるいは有益な経験であったという感想が聞かれるそうです。
現在進められている司法制度改革の中では,刑事事件の裁判そのものに一般市民が参加する「裁判員」制度が導入されることになっています。プロの裁判官と一般市民が一緒になって有罪・無罪の認定をし,量刑を決めるという手続は,これまで我が国が経験したことのないやり方ですから,実務家の間にも不安があり,実現すれば,種々の混乱も起こると思います。しかし,私は,検察審査会の実績に徴しても,この制度は,国民の司法参加として有効に機能すると思っています。