試験観察
- Q 少年事件の手続に「試験観察」というものがあると聞いたのですが,どのようなものなのですか。
- A 家庭裁判所では,非行のあった少年について,非行の内容だけでなく,どうして過ちを犯したかという事情もよく調査した上で,再び過ちを犯すことがないよう,本人にとって最も適した措置が決められます。そこで,調査の結果などから,直ちに最終的な処分を決定することが適当でないと判断した場合には,中間的な処分として,少年を相当の期間,家庭裁判所調査官の観察に付することができます。これが試験観察です。つまり,しばらくの間,少年の様子を観察し,その経過を見た上で最終的な処分が決定されることになるのです。
- Q 家庭裁判所調査官の観察というのは,どのようにして行われるのですか。
- A 具体的な方法は,個別の事案に応じて千差万別ですが,一般的には,担当の家庭裁判所調査官が,少年や保護者を定期的に家庭裁判所に呼んで面接を行ったり,手紙のやりとりをしたり,家庭訪問を行うなどしながら,様子を観察します。その間,少年の心情を把握するために日記や作文を書かせて指導したり,心理テストを行ったりします。また,職場の雇主や学校の先生,ボランティアの方々の協力,援助を求めて一緒に指導したりすることもあります。
心理テスト(模擬)
試験観察には,このように少年を家庭に置いたまま行動を観察する「在宅試験観察」という形態のほか,適当な施設,団体,個人に少年を預かって指導してもらい,そこでの少年の変化を観察する「補導委託」という形態もあります。
- Q 補導委託が行われるのは,どのような場合ですか。
- A 少年非行の中には,親から愛情やしつけを十分に受けられなかったり,地域の不良仲間から抜け出せなかったりするために非行を繰り返すといった,少年自身よりも周囲の環境に問題があるケースも少なくありません。そのような場合に,一旦従来の生活の場から少年を切り離してその気持ちの安定を図り,併せて環境の改善を働き掛けるため,この補導委託が選択されることがあるのです。
- Q どのような人に少年の補導を委託しているのですか。
- A 補導委託の間,少年を預かってくださる方を「受託者」と言います。受託者には,商店や食堂の経営者,農家などの個人の方のほか,児童福祉施設,更生保護施設等やその他の団体にもなっていただいています。受託者は,民間のボランティアであり,特別な資格は必要ありません。ただし,適切な補導委託が行われるよう,少年の補導に十分な熱意と能力を持ち,適当な環境や設備を備えている方や施設,団体にお願いすることになります。
老人ホームでの奉仕活動(模擬)
- Q 具体的には,少年はどのようなことをするのですか。
- A 受託者のもとで,健全な生活習慣や職業についての指導を受けます。例えば,農家の場合ですと,受託者の方と寝食を共にしながら,農作業を手伝い,規則正しい生活や仕事に取り組む心構え,農作業の技術などを身に付けることになります。また,最近では,受託者の指導のもとで,少年が老人ホーム等でお年寄りのお世話をするといった社会への奉仕活動に参加したり,親子関係を改善させるきっかけにしてもらうため,少年とその保護者が一緒にキャンプ活動に参加するといったものもあります。
- Q いろいろとバラエティーがあるのですね。ところで,少年は,どのぐらいの期間,試験観察を受けるのですか。
- A 通常は,3か月から4か月程度です。補導委託も同じくらいの期間で行われますが,社会奉仕活動などでは,少年の持つ問題の程度に合わせて,1,2日で終わることもあります。
東京家庭裁判所作成のリーフレット
- Q 少年事件の手続の中に,一般の人が参加していることは全然知りませんでしたが,興味深いことですね。
- A そうですね。少年は,将来,地域社会の中で自立し,生活していかなければなりません。試験観察は,少年の立ち直りの度合いを観察するのに有効であるというだけでなく,規則正しい社会生活を送る中で他人と触れ合い,健全な社会性を身に付けてもらい,更生のきっかけを提供するものでもあるのです。