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最高裁判所長官「新年のことば」

平成31年1月1日

                                                                 新 年 の こ と ば

最高裁判所長官    大谷直人

   新年を迎えました。新元号に改まり時代の節目となる年の初めに,一言御挨拶申し上げます。

 昨年は,平昌冬季オリンピック・パラリンピックをはじめとする様々なスポーツの国際的な大会において,我が国の選手が大いに活躍して注目されるといった明るい話題もありましたが,他方で,近年と同様に,地震,台風,豪雨などが各地で頻発し,多くの人々に甚大な被害が及ぶこととなり,自然災害の脅威を引き続き認識させられた年でもありました。また,ガバナンスやコンプライアンスといった観点から組織の在り方が問われる出来事が相次いで発覚しましたが,残念なことに裁判所も例外ではありませんでした。改めていうまでもなく,裁判所は,法にのっとり社会に生起する紛争の解決を図ることによって法の支配を実現する使命を託されています。裁判所に働く者一人一人が,それぞれの職場において,安易に先例に頼るのではなく,常にその行為が適正なものといえるかを問う姿勢で職務に当たることが求められていることに思いを致し,自らを戒めなければならないと感じています。

 本年5月に裁判員制度は施行から丸10年を経過することとなります。戦後最大の刑事司法の改革が,国民の理解と協力に支えられ,これまで安定的に運営されてきたことには感慨を覚えずにいられません。しかし,今後,制度を引き続き順調に運用し,社会に深く根付かせていくためには,裁判員選任手続から判決に至る運営全般について,改善に向けた不断の努力が欠かせないところです。とりわけ,法曹三者は,10年にわたり事件処理が蓄積されてきたことの重みを改めて認識し,その中から審理手続上の課題を洗い出して改善策を検討し,その成果を次の実務にいかす作業を協力しながら続けていく責務を国民に対して負っているといえます。また,裁判員裁判への国民の幅広い参加に向けて,裁判員経験者の協力を得ての広報行事や,制度実施に当たり接点を持った様々な団体への働きかけなど,制度の意義や実際の運用状況を広く伝えると同時に,それぞれの地域の実情等を正しく受け止めるために,地道な努力を続けていかなければなりません。刑事訴訟手続全体に目を向けると,本年中に取調べの録音・録画や通信傍受手続の合理化・効率化等の新たな制度が実施されます。捜査や刑事裁判の実務に大きな影響を及ぼす可能性があり,裁判所としても,適正円滑な実務運用が確保されるよう,引き続き十分な準備とそのための検討を重ねておくことが求められます。

 民事裁判の分野においては,審理判断の質の向上を図るため,各庁において,合議の充実を基礎に据えて部の機能を活性化させ,更には部や庁を超えた裁判官同士の意見交換を充実させるなどの取組が進められてきました。そこでは,部の内外でのコミュニケーションや議論を通じて,担当する事件の処理の枠を超えて課題を共有し,改善策を模索することで,自らの力量を向上させるとともに,民事裁判全体のプラクティスの改善に向けても積極的に貢献する,そのような裁判官像が念頭に置かれています。また,現在検討が進められている民事訴訟手続のIT化についても,手続の在り方を全体的に見直し,裁判の質の更なる向上を図る契機として取り組んでいくべきものといえます。裁判官は,職員とともに,このような取組の意義を理解してこれを自らの課題として引き受け,真に望ましいIT化,ひいては在るべき民事訴訟の実現に向けて,各庁で行われている取組に積極的に関わっていってほしいと願っています。

 家庭裁判所は今年で創設70周年を迎えます。その間の歩みの中で,裁判所に持ち込まれる事件には常にその時々の社会経済情勢や人々の家族観・価値観が反映されてきましたが,近時における家族や社会の在りようの変化にはとりわけ目を見張るものがあり,家事事件は,当事者間の対立が先鋭化するなどして解決が困難な事案が増えてきています。少年事件においても,調査や処遇判断に困難を覚える事件が少なくありません。また,こうした変化に伴い,家庭裁判所が社会で果たすべき役割も,それに応じて大きく変わりつつあります。成年後見制度については,成年後見制度利用促進基本計画を受けて,市町村をはじめとする関係機関との間で連携に向けた協議が進められています。裁判所としては,引き続き個々の事件処理における運用の改善に向けた努力を尽くしていく一方で,計画の目指す地域連携ネットワークの構築へ向けて,関係機関とも協力していかなければなりません。各職種がそれぞれの果たすべき役割を改めて検討し,関係機関との連携を強化するなどして,家庭裁判所としての機能を一層充実させていくことが求められます。

 少子高齢化が進展し若年労働人口が減少する中,次の時代の裁判所を支える職員の確保が困難になっていくことが予想されます。意欲ある優秀な人材の確保に向け,職員の採用や育成面での取組を一層強めていかなければなりません。あわせて,引き続き働きやすい職場環境の整備に努め,世代を問わず,全ての職員がその能力を高め,十全に発揮することができるための方策を進めていくことによって,組織の活力を向上させ,質の高い司法サービスの維持を図っていきたいと考えています。

 年頭に当たり,身近な存在として国民からより信頼される裁判所の実現に向け,裁判所職員全員とともに取り組んでいく決意を新たにして,私からの挨拶とします。