裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成15(あ)1033
- 事件名
業務上過失傷害被告事件
- 裁判年月日
平成19年3月26日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
決定
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第61巻2号131頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
平成14(う)345
- 原審裁判年月日
平成15年3月25日
- 判示事項
1 患者の同一性確認について手術に関与する医療関係者が負う義務
2 患者を取り違えて手術をした医療事故において麻酔を担当した医師につき麻酔導入前に患者の同一性確認の十分な手立てを採らなかった点及び麻酔導入後患者の同一性に関する疑いが生じた際に確実な確認措置を採らなかった点で過失があるとされた事例
- 裁判要旨
1 患者の同一性確認について,病院全体の組織的なシステムの構築,医療を担当する医師や看護婦の間での役割分担の取決め,それらの周知徹底等を欠いている場合には,手術に関与する医師,看護婦等の関係者は,他の関係者が上記確認を行っていると信頼し、自らその確認をする必要がないと判断することは許されず,各人の職責や持ち場に応じ,重畳的に,それぞれが責任を持って患者の同一性を確認する義務がある。
2 患者を取り違えて手術をした医療事故において,麻酔を担当した医師には,(1)麻酔導入前に,患者への姓による呼び掛けなど患者の同一性確認として不十分な手立てしか採らず,患者の容ぼうその他の外見的特徴などをも併せて確認しなかった点において,また,(2)麻酔導入後に外見的特徴や検査の所見等から患者の同一性について疑いが生じた際に,他の関係者に対して疑問を提起し,一定程度の確認のための措置は採ったものの,確実な確認措置を採らなかった点において,過失があり,他の関係者が同医師の疑問を真しに受け止めなかったことなどの事情があるとしても,同医師において注意義務を尽くしたということはできない。
- 参照法条
(1,2につき)刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段
- 全文