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最高裁判所判例集

事件番号

 平成20(受)442

事件名

 組合員代表訴訟事件

裁判年月日

 平成21年3月31日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 民集 第63巻3号472頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成19(ネ)2816

原審裁判年月日

 平成19年12月12日

判示事項

 1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付したが,監事において,当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があった場合における,上記組合員の提起した代表訴訟の適法性
2 農業協同組合の合併契約に,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項がある場合,被合併組合の理事会で上記契約の締結に賛成した理事等は上記条項に基づく責任を負うか
3 農業協同組合の合併契約中の,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう等があったため新設組合が損害を受けたときは故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項が,被合併組合に貸倒引当金の過少計上があったときには,故意又は重過失のある被合併組合の役員に引当不足額相当額をてん補する義務を負わせる趣旨を含むとされた事例

裁判要旨

 1 農業協同組合の理事に対する代表訴訟を提起しようとする組合員が,同組合の代表者として監事ではなく代表理事を記載した提訴請求書を同組合に送付した場合であっても,監事において,上記請求書の記載内容を正確に認識した上で当該理事に対する訴訟を提起すべきか否かを自ら判断する機会があったときは,上記組合員が提起した代表訴訟を不適法として却下することはできない。
2 農業協同組合の合併契約に,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために新設組合が損害を受けたときは,そのことに故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項が含まれている場合,被合併組合の理事会に出席して上記契約の締結に賛成した理事又はこれに異議を述べなかった監事は,個人として上記条項に基づく責任を負う旨の意思表示をしたものとして,新設組合との関係で,上記責任を免れない。
3 農業協同組合の合併契約中の,被合併組合の貸借対照表等に誤びゅう脱落等があったために新設組合が損害を受けたときは,そのことに故意又は重過失のある被合併組合の役員個人が賠償責任を負う旨の条項は,次の(1),(2)などの判示の事実関係の下では,被合併組合において,不良債権が適正に評価されておらず,貸倒引当金が過少に計上されていることが判明したときには,過少に計上したことに故意又は重過失のある被合併組合の理事及び監事に対して,引当不足額相当額を新設組合にてん補する義務を負わせる趣旨を含むものと解される。
  (1) 上記契約は,新設組合に引き継がれる被合併組合の財産が貸借対照表等どおりのものであることを前提とするものであり,被合併組合の総会では,不良債権であるのに,そうでないように見せ掛けるなどした場合に,被合併組合の役員が上記条項に基づく責任を負うことになるなどの説明がされている。
  (2) 被合併組合及び新設組合では,不良債権を適正に評価し,必要な貸倒引当金を計上し,自己資本比率の維持,向上を図っていくことが重要な課題となっていた。

参照法条

 (1につき)農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)39条1項,農業協同組合法(平成17年法律第87号による改正前のもの)39条2項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条1項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)267条3項,商法(平成17年法律第87号による改正前のもの)275条ノ4,会社法386条2項1号,会社法847条1項,会社法847条3項 (2,3につき)民法第3編第2章 契約

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