裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成19(受)2065
- 事件名
連帯保証債務履行請求事件
- 裁判年月日
平成22年1月29日
- 法廷名
最高裁判所第二小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
破棄自判
- 判例集等巻・号・頁
集民 第233号33頁
- 原審裁判所名
大阪高等裁判所
- 原審事件番号
平成19(ネ)292
- 原審裁判年月日
平成19年9月11日
- 判示事項
A社の財務部門を法人化して設立され,A社を中核とするグループに属するX社が,上記グループに属するB社に金員を貸し付け,B社の代表取締役であるYがこの貸付けに係るB社の借入金債務を保証した場合において,B社が既に事業を停止している状況下で,X社がYに対して保証債務の履行を請求することが権利の濫用に当たるとされた事例
- 裁判要旨
A社の財務部門を法人化して設立され,A社を中核とするグループに属するX社が,上記グループに属するB社に金員を貸し付け,B社の代表取締役であるYがこの貸付けに係るB社の借入金債務を保証した場合において,B社が既に事業を停止している状況下で,X社がYに対して保証債務の履行を請求することは,次の(1)〜(5)など判示の事情の下においては,権利の濫用に当たる。
(1) B社は,A社と代表取締役を共通にするC社の支店を法人化し,上記グループに属するD社が全額出資して設立された会社であり,その設立後は,上記グループに属するE社がB社の資金を掌握するなどして,上記グループに属する各社が,B社との間で締結した経営顧問契約等の各契約に基づき,B社の売上げから顧問料等の名目により確実に収入を得ることができる体制が周到に築かれていた。
(2) B社は,その業務遂行に関し代表取締役にはほとんど裁量の余地がなく,資金繰りを含め経営判断は,A社の代表取締役等に依存し,その指示に従わざるを得ない経営体制にあった。
(3) Yは,上記支店でアルバイトとして勤務を始め,B社が設立された際に同社の正社員となり,わずか数か月後にB社の代表取締役に就任したものの,B社の設立の前後を通じてその勤務場所や勤務実態等に格別の変化はなく,上記(2)のB社の経営体制の下にあっては,単なる従業員とほとんど異ならない立場にあった。
(4) Yは,近い将来B社の資金繰りが行き詰まるおそれがある状況の下で,強く働きかけられてB社の代表取締役に就任し,就任後間もなくしてB社の資金繰りが行き詰まるや,A社の代表取締役が全株式を保有するX社からB社が融資を受け,この融資に係る債務を保証するよう指示されたものであり,これを拒むことは事実上困難であった。
(5) 上記貸付けにおいては,利息制限法所定の制限利率を超える利率による利息及び損害金の約定がされていた。
(補足意見がある。)
- 参照法条
民法1条3項,民法446条
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