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最高裁判所判例集

事件番号

 平成16(あ)385

事件名

 業務上過失致死被告事件

裁判年月日

 平成17年11月15日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 決定

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第59巻9号1558頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成15(う)1263

原審裁判年月日

 平成15年12月24日

判示事項

 大学附属病院の耳鼻咽喉科に所属し患者の主治医の立場にある医師が抗がん剤の投与計画の立案を誤り抗がん剤を過剰投与するなどして患者を死亡させた医療事故について同科の科長に業務上過失致死罪が成立するとされた事例

裁判要旨

 大学附属病院の耳鼻咽喉科に所属し患者の主治医の立場にある医師が,抗がん剤の投与計画の立案を誤り,週1回投与すべき抗がん剤を連日投与するとともに,その副作用に適切に対応することなく患者を死亡させた医療事故において,その症例が極めてまれであり,科長を始めとして同科に所属する医師らに同症例を取り扱った経験がなく,上記抗がん剤による治療も未経験でその毒性,副作用等について十分な知識もなかったなど判示の事実関係の下では,治療方針等の最終的な決定権を有する同科長には,上記抗がん剤による治療の適否とその用法・用量・副作用などについて把握した上で,投与計画案の内容を具体的に検討して誤りがあれば是正すべき注意義務を怠った過失と,主治医らの上記抗がん剤の副作用に関する知識を確かめ,的確に対応できるように事前に指導するとともに,懸念される副作用が発現した場合には直ちに報告するよう具体的に指示すべき注意義務を怠った過失があり,業務上過失致死罪が成立する。

参照法条

 刑法(平成13年法律第138号による改正前のもの)211条前段

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