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最高裁判所判例集

事件番号

 平成14(受)1257

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成15年11月11日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 民集 第57巻10号1466頁

原審裁判所名

 大阪高等裁判所

原審事件番号

 平成13(ネ)785

原審裁判年月日

 平成14年3月15日

判示事項

 1 開業医に患者を高度な医療を施すことのできる適切な医療機関へ転送すべき義務があるとされた事例
2 医師に患者を適時に適切な医療機関へ転送すべき義務を怠った過失がある場合において上記転送が行われていたならば患者に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときの医師の不法行為責任の有無

裁判要旨

 1 開業医が,その下で通院治療中の患者について,初診から5日目になっても投薬による症状の改善がなく,午前中の点滴をした後も前日の夜からのおう吐の症状が全く治まらず,午後の再度の点滴中に軽度の意識障害等を疑わせる言動があり,これに不安を覚えた母親が診察を求めたことなどから,その病名は特定できないまでも,自らの開設する診療所では検査及び治療の面で適切に対処することができない何らかの重大で緊急性のある病気にかかっている可能性が高いことを認識することができたなど判示の事情の下では,当該開業医には,上記診察を求められた時点で,直ちに当該患者を診断した上で,高度な医療を施すことのできる適切な医療機関へ転送し,適切な医療を受けさせる義務がある。
2 医師に患者を適時に適切な医療機関へ転送すべき義務を怠った過失がある場合において,上記転送が行われ,同医療機関において適切な検査,治療等の医療行為を受けていたならば,患者に重大な後遺症が残らなかった相当程度の可能性の存在が証明されるときは,医師は,患者が上記可能性を侵害されたことによって被った損害を賠償すべき不法行為責任を負う。

参照法条

 民法709条

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