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最高裁判所判例集

事件番号

 平成15(受)1284

事件名

 損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成17年7月14日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 民集 第59巻6号1323頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成13(ネ)4516

原審裁判年月日

 平成15年4月22日

判示事項

 1 証券取引における適合性原則違反と不法行為の成否
2 証券会社の担当者による株価指数オプションの売り取引の勧誘が適合性原則から著しく逸脱するものであったとはいえないとして不法行為の成立が否定された事例

裁判要旨

 1 証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となる。
2 証券会社甲の担当者が顧客である株式会社乙に対し株価指数オプションの売り取引を勧誘してこれを行わせた場合において,当該株価指数オプションは証券取引所の上場商品として広く投資者が取引に参加することを予定するものであったこと,乙は20億円以上の資金を有しその相当部分を積極的に投資運用する方針を有していたこと,乙の資金運用業務を担当する専務取締役らは,株価指数オプション取引を行う前から,信用取引,先物取引等の証券取引を毎年数百億円規模で行い,証券取引に関する経験と知識を蓄積していたこと,乙は,株価指数オプションの売り取引を始めた際,その損失が一定額を超えたらこれをやめるという方針を立て,実際にもその方針に従って取引を終了させるなどして自律的なリスク管理を行っていたことなど判示の事情の下においては,オプションの売り取引は損失が無限大又はそれに近いものとなる可能性がある極めてリスクの高い取引類型であることを考慮しても,甲の担当者による上記勧誘行為は,適合性の原則から著しく逸脱するものであったとはいえず,甲の不法行為責任を認めることはできない。
(2につき補足意見がある。)

参照法条

 民法709条,証券取引法2条22項,証券取引法43条1号,証券取引法(平成10年法律第107号による改正前のもの)54条1項,証券会社の健全性の準則等に関する省令(昭和40年大蔵省令第60号)8条5号

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