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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和56(オ)609

事件名

 損害賠償

裁判年月日

 昭和61年6月11日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第40巻4号872頁

原審裁判所名

 札幌高等裁判所

原審事件番号

 昭和55(ネ)246

原審裁判年月日

 昭和56年3月26日

判示事項

 一 出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法二一条二項前段にいう検閲
二 名誉侵害と侵害行為の差止請求権
三 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めの許否
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合と口頭弁論又は債務者審尋

裁判要旨

 一 雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法二一条二項前段にいう検閲に当たらない。
二 名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
三 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
四 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法二一条の趣旨に反するものとはいえない。

参照法条

 憲法13条,憲法21条,民訴法757条2項,民訴法760条,民法1条ノ2,民法198条,民法199条,民法709条,民法710条,刑法230条ノ2

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