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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和43(オ)371

事件名

 土地建物所有権移転登記手続等請求

裁判年月日

 昭和45年9月24日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 民集 第24巻10号1450頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 昭和39(ネ)2990

原審裁判年月日

 昭和42年11月28日

判示事項

 一、数個の不動産上に代物弁済予約形式の債権担保契約を締結した場合の債権者の清算義務
二、代物弁済予約形式の債権担保契約における債権者の清算義務と所有権移転請求権保全の仮登記、根抵当権設定登記、賃借権設定の仮登記を了している後順位債権者の地位
三、代物弁済予約形式の債権担保契約における債権者の清算義務と債務者の本登記手続義務ないし引渡義務との関係

裁判要旨

 一、数個の不動産上に代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため予約完結権を行使して担保目的の実現をはかるため同一訴訟手続で本登記手続を求めた場合に、債務者が清算金の支払と引換えに履行する旨の主張をしたときは、特段の事情のないかぎり、各不動産の価額に準じて債権者の有する債権額を按分したうえで、債務者への清算金の額を算定して、その清算金の支払と引換えに右請求を認容すべきである。
二、代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、担保目的実現の手段として、後順位債権者に対し本登記手続承諾の請求をしたときは、後順位債権者は、清算金の支払と引換えにその履行をなすべき旨の主張をなしうるが、その場合、後順位債権者が、根抵当権設定登記とともに所有権移転請求権保全の仮登記および賃借権設定の仮登記をも有するとしても、その各仮登記が、根抵当権の設定と併用してなされた同一債権担保の目的を有する債権担保契約に基づく仮登記にすぎないときは、右各仮登記は、右引換履行の主張をするにあたつては、根抵当権設定登記と一体として取扱われるべきものである。
三、貸金債権担保のため債務者所有の不動産につき代物弁済予約形式の契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者は、債務者が弁済期に債務の弁済をしないため、予約完結権を行使した場合において、目的不動産を換価処分し、またはこれを適正に評価することによつて具体化する右物件の価額から、自己の債権額および優先弁済を受くべき後順位債権者の債権額を差し引き、なお残額があるときは、これに相当する金銭を清算金として債務者に支払うことを要するのであつて、この担保目的実現の手段として債務者に対し右物件につき本登記手続ないしその引渡を求める訴を提起した場合に、債務者が右清算金の支払と引換えにその履行をなすべき旨を主張したときは、債権者が第三者への換価処分による売却代金を取得したのちに清算金を支払えば足りると認められる客観的な合理的理由がある場合を除き、債権者の右請求は、債務者への清算金の支払と引換えにのみ認容されるべきものと解するのが相当である。

参照法条

 民法482条,民法392条1項,不動産登記法1条,不動産登記法7条,不動産登記法105条

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