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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和23(れ)1171

事件名

 常習賭博

裁判年月日

 昭和24年2月10日

法廷名

 最高裁判所第一小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 刑集 第3巻2号155頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和23年6月9日

判示事項

 一 罪となるべき事實判示の具體性の程度
二 俗にコイコイ又は後先と稱する賭博判示の方法
三 有罪判決の理由判示の程度と賭博罪

裁判要旨

 一 罪となるべき事實とは、刑罰法令各本條における犯罪の構成要件に該當する具體的事實というものであるから、該事實を判決書に判示するには、その各本條の構成要件に該當すべき具體的事實を該構成要件に該當するか否かを判定するに足る程度に具体的に明白にし、かくしてその各本條を適用する事實上の根據を確認し得られるようにするを以て足るものというべく、必ずしもそれ以上更にその構成要件の内容を一層精密に説示しなければならぬものではないといわねばならぬ。
二 「被告人等は外數名と共に花札を使用し、金銭を賭け俗にコイコイ又は後先と稱する賭博を爲したものである。」と判示したのであるからその判示は、當該行爲が同罪の構成要素たる「財物」に該當する金銭であること並びに他の構成要素たる「偶然の勝敗を決すべき博戯」に該當する俗にコイコイ又は後先と稱する數名の當事者が花札を使用して勝敗を爭う博戯であることを明白にしているものと言うべく、從つてその判示を以て前示法條を適用する事實上の根據を確認せしめるに足るものとするに妨げない。
三 舊刑訴第三六〇條第一項は、同第四九條第一項所定の裁判の理由を有罪判決の理由において具體的に示すべき最小限度の要件を規定したもので、裁判の理由には、罪となるべき事實の外主文の因て生ずる量刑の事由をも示すを妥當とすべきこと勿論である。されば、有罪判決の理由には罪となるべき事實の外犯罪の原因、動機、手段の特殊性、結果の輕重等をも判示するを相當とすべく、本件のごとき賭博罪にあつては時として、財物の種類、數額、賭博方法の詳細勝敗の回數、結果等をも判示するを適當とすることがある。殊に常習賭博においては、賭金の數額、手段方法の如何、勝負の回數結果等によつて常習を認定判示し得べき場合あることを忘れてはならない。しかし、これらの判示方法はいずれも妥當の問題であつて違法の問題ではない。

参照法条

 舊刑訴法360條1項,刑法185條

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