裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和29(オ)708
- 事件名
建物収去土地明渡請求
- 裁判年月日
昭和32年1月22日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
民集 第11巻1号34頁
- 原審裁判所名
東京高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和29年6月30日
- 判示事項
一 土地賃貸人が土地を引き渡さないため右地上に建物を建て新たに営業を始める賃借人の計画が実行できなかつた場合と営業利益の喪失による損害の有無
二 土地賃貸人の土地引渡義務の不履行と賃借人の右地上に建物を建て営業を営むことによりうべかりし利益の喪失による損害との間の因果関係
三 営業利益の喪失による損害の賠償請求訴訟と損害額算定の基礎たる事実の主張の程度
- 裁判要旨
一 土地賃借人がその地上に建物を建て同所で新たに営業を営むことを計画していたにかかわらず、賃貸人が土地を引き渡さないため右計画を実行することができなかつたときは、賃借人には、その営むことによりうべかりし利益の喪失による損害が生じたものと推定すべきであつて、賃借人が未だ現実に営業を開始せず、またたとえ営業を開始しても必ず利益があつたとは限らないからといつて、右損害が生じなかつたものと認めるべきではない。
二 土地賃貸人が土地を引き渡さないため、賃借人がその地上に建物を建て同所で営業を営むことによりうべかりし利益を喪失したときは、右損害は、賃貸人の債務不履行による特別事情による損害となりえないものではない。
三 営業利益の喪失にいよる損害の賠償請求訴訟において、原告が、その営業とは、本件土地に店舗を建設して、そこで「北海道産の海産物を同地の生産者から直接に仕入れ、内地産の海産物はD魚市場で仕入れ、従業員は壮年の男一人女二人および老年の女一人の家族四人がこれにあたり、小僧等は必要があれば雇い入れる」という程度の規模による海産物商を営むにあつた旨を主張したときは、その主張の事実を基礎として通常の場合に予想される営業利益を算定することは不可能ではないから、損害額算定の基礎たる事実についての具体的主張を欠くものとはいえない。
- 参照法条
民法416条
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