裁判例結果詳細
高等裁判所 判例集
- 事件番号
昭和42(う)1589
- 事件名
通貨及証券模造取締法違反被告事件
- 裁判年月日
昭和43年11月13日
- 裁判所名・部
東京高等裁判所 第七刑事部
- 結果
- 高裁判例集登載巻・号・頁
第21巻5号528頁
- 原審裁判所名
- 原審事件番号
- 判示事項
一、 通貨及証券模造取締法第一条所定の「、、、銀行紙幣ニ、、、紛ハシキ外観ヲ有スルモノ」の意義
二、 日本銀行発行の千円紙幣に「紛ハシキ外観ヲ有スルモノ」にあたる事例
三、 芸術家のハプニングとしての要素を含む創作行為と憲法第二一条との関係
- 裁判要旨
一、 通貨及証券模造取締法第一条にいわゆる、「、、、銀行紙幣ニ、、、紛ハシキ外観ヲ有スルモノ」とは、創作品が、刑法所定の通貨偽造罪を構成する程度にまでは達していないものであり、かつ、創作者の観念、主張等の主観的意図にかかわりなく、当該創作品自体から純客観的に判断し、その行使の場所、時、態様、或は相手方等、その用い方如何によつては、なお、通常人をして真正の紙幣と誤認させるおそれがあり、欺罔の手段としても用いられる危険性を帯有する程度に達しているものをいうものと解すべきである。
二、 創作品の表面が真正な千円紙幣の表側と全く同一の寸法、図柄であり、かつ、その図柄が真正な千円紙幣を基にした写真製版による精巧なもので、色彩も真正な千円紙幣に酷似している場合には、その裏面が真正な千円紙幣と全く異なつた図柄又は白紙であつても、前記法条にいわゆる、千円紙幣に「紛ハシキ外観ヲ有スルモノ」にあたる。
三、 芸術家が、いわゆるハプニングとしての要素を含む芸術上の表現行為として行なう場合であつても、前記のような千円紙幣の創作行為は、公共の福祉に反するものであり、これを処罰することは憲法第二一条に違反するものではない。
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