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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成15(行ウ)379等

事件名

 法人税等更正処分等取消請求事件(第1事件),法人税更正処分取消等請求事件(第2事件)

裁判年月日

 平成17年7月28日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 法人税に係る一事業年度における所得金額及び「翌期へ繰り越す欠損金」(以下「繰越欠損金」という。)の金額の更正処分の取消しを求める訴えと同時に提起された,その後の事業年度における繰越欠損金額の更正処分の取消しを求める訴えにつき,後者の更正処分における繰越欠損金控除前の所得金額が,申告された繰越欠損金控除前の所得金額より少ない場合であっても,訴えの利益があるとされた事例 2 法人が発行した社債の取引に係る支払利息のうち適正利率を超える部分が,法人税の所得の金額の計算上,損金の額に算入することができないされた事例 3 同族会社である法人が償還直前の株式投資信託を前記法人の役員から買い取った取引につき,法人税法132条,35条を適用して,適正な価格と実際の購入価額との差額について損金の額に算入することはできないとされた事例

裁判要旨

 1 法人税に係る一事業年度における所得金額及び「翌期へ繰り越す欠損金」(以下「繰越欠損金」という。)の金額の更正処分の取消しを求める訴えと同時に提起された,その後の事業年度における繰越欠損金額の更正処分の取消しを求める訴えにつき,少なくとも,所得金額を巡って更正の請求をし,又は更正処分の取消訴訟を提起するなどしてそれに基因する当該事業年度における繰越欠損金額を争っている場合や,当該事業年度における繰越欠損金額自体に違算があってこれを巡って更正の請求をし,又は更正処分の取消訴訟を提起するなどして争っている場合に,これと同時に,それに基因して修正されるべきその後の各事業年度における繰越欠損金額を連続して争って訴えを提起した場合には,後者の争いに係る繰越欠損金額の多寡が,当事者の過去の課税関係又は今後の税務申告等に法的な影響を及ぼす場合があるなど,繰越欠損金額を争う法律上の利益がある場合に当たる限り,後者の争いに係る事業年度の所得金額に争いがない場合や,後者の争いに係る更正処分における所得金額の方が申告所得額より少ない場合であっても,訴えの利益が認められるとして,前記の後の事業年度における繰越欠損金の更正処分における繰越欠損金控除前の所得金額が,申告された繰越欠損金控除前の所得金額より少ない場合である前記訴えに,訴えの利益があるとした事例 2 法人の発行した社債の取引の実体は,独立した第三者が前記社債を購入したものではなく,実質的には,前記法人の役員ら若しくはその関係者又はこれらの者が実質的に支配する別法人である購入資金拠出者から前記社債を発行した法人に対して融資したものであるから,支払利息の適正利率の数値については,債券としての利率を検討するよりも,融資の際の利率を検討することがその実体に即するものであるとして適正利率を認定した上,その利率を超える部分については,利息受取人たる前記資金拠出者に対する利益供与に当たるところ,前記取引の一部については,支払利息の受取人が前記法人の役員であることを隠ぺいするために第三者を形式的な受取人として名義貸しがされたものであって,前記法人が事実を隠ぺいし,又は仮装して経理することにより前記法人の役員に対して支給した報酬の額(法人税法34条2項)に当たり,また,前記取引の一部については,真実の利息受取人が判明せず支払の法的性質が確定しないから,業務との関連性がないと推認せざるを得ない使途不明金であるとして,いずれも法人税の所得の金額の計算上,損金の額に算入することはできないとした事例 3 同族会社である法人が償還直前の株式投資信託を前記法人の役員から買い取った取引につき,前記法人に損失しか生じない価格での前記取引は,純経済人として不合理,不自然なものであり,法人税法132条を適用して否認されるべきであるが,同条の規定は,客観的,合理的基準に従って同族会社の行為計算を否認すべき権限を税務署長に与えたものと解され,包括的,一般的,白地的に課税処分権限を与えたものではないから,純経済人として合理的な取引に引き直すことができる限りにおいて,最小限の否認に留めるべきであるところ,前記取引は取引価格の設定いかんでは純経済人として合理的な取引にもなり得ることなどからすれば,前記取引自体を否認すべきではないとして,適正な価格と実際の購入価額との差額について,前記会社の役員に対する役員賞与となり,法人税法35条によりこれを損金の額に算入することはできないとした事例

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