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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成14(行コ)106

事件名

 土地改良事業計画決定等取消(原審・大津地方裁判所平成6年(行ウ)第6号)

裁判年月日

 平成17年12月8日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 土地改良事業計画の取消しを求める訴えが,不適法とされた事例 2 土地改良事業計画により漁業の営業上の利益を侵害されると主張する者及び生命,身体,財産その他生活上の利益を侵害されるおそれがあると主張する者で,土地改良法3条の資格を有しない者が,同人らには同事業計画に対する異議申立適格がないことを理由として農林水産大臣がした異議申立て却下決定に対してした同決定の取消請求が,棄却された事例 3 川の下流域の水田地域を施行地域とし,その農業用水を確保するために,川の上流にダムを新設することを主な内容とする土地改良事業計画の決定に対する異議申立てについての決定の取消請求が,認容された事例
   

裁判要旨

 1 土地改良事業計画(以下「事業計画」という。)の取消しを求める訴えにつき,土地改良法87条6項,7項及び10項は,原処分である事業計画の取消しの訴えの提起を許さず,裁決である異議申立てについての決定に対する取消しの訴えのみの提起を認めるいわゆる裁決主義を規定していると解するのが相当であり,そのように解しても,異議申立てについての決定に対する取消訴訟を提起した者は,その訴訟において事業計画自体の違法事由も主張することができると解され,また,事業計画自体が違法であることを理由に異議申立てについての決定を取り消す旨の判決がされ,同判決が確定した場合は,同時に,原処分である事業計画自体も取り消されたものとして,その効力を失うものと解するのが相当であるから,土地改良事業計画に不服のある者が原処分である土地改良事業計画の決定そのものに対して取消しの訴えを提起することはできないとして,前記訴えを不適法とした事例 2 土地改良事業計画により漁業の営業上の利益を侵害されると主張する者及び生命,身体,財産その他生活上の利益を侵害されるおそれがあると主張する者で,土地改良法3条の資格を有しない者が,同人らには同事業計画に対する異議申立適格がないことを理由として農林水産大臣がした異議申立て却下決定に対してした同決定の取消請求につき,同法や関係法規には同人らが主張する利益を保護する規定が見当たらず,また,同法1条の規定する同法の目的に照らせば,同法が周辺河川での漁業従事者の漁業上の営業の利益や周辺地域に居住する者の生活上の利益というような個々人の個別的利益を保護すべきものとする趣旨を含むものと解することもできないから,同人らは同事業計画に対する異議申立適格を有しないとして,前記請求を棄却した事例 3 川の下流域の水田地域を施行地域とし,その農業用水を確保するために,川の上流にダムを新設することを主な内容とする土地改良事業計画の決定に対する異議申立てについての決定の取消請求につき,前記土地改良事業計画の決定は,土地改良事業設計基準(昭和56年4月1日付け農林水産事務次官通達の「設計・ダム」)において,ダムの規模,貯水容量,総事業費を算定し,必要性,技術的可能性,経済性,負担の妥当性の基本的な要件を判断するために,全体設計調査の段階で行うべきものとされていた,測量に基づく地形図の作成,ボーリング調査,弾性波探査及び横杭の地下調査等の極めて重要な調査を実施しなかったことにより,ダムの規模を誤って設計した瑕疵があるというべきで,その瑕疵は同決定の基本的な要件である土地改良法施行令2条3号所定の経済性の要件の審査に極めて重要な影響を与えるほどのものであって,その手続経過も適正手続に反するものとして違法といわざるを得ず,また,土地改良事業計画の決定は,土地改良法87条2項,8条2項,3項に定める専門的知識を有する技術者の調査報告に基づいて行われなければならないところ,この調査報告の手続は,実質的に履践されなければならず,当該調査報告が,手続規定の要求する調査,検討,審査に基づかないなどの事由がある場合には,その土地改良事業計画決定は,前記の専門技術者の調査報告を経たものとはいえず,違法というべきであるとした上で,前記の調査報告は,前記土地改良事業設計基準で定められた重要な調査等が行われない状況で把握された誤った事実を前提にしたものであって,土地改良法87条2項,8条2項,3項の趣旨を実質的に満たさないものであり,前記土地改良事業計画の決定は違法であるとして,前記取消請求を認容した事例 

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