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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行コ)7

事件名

 更正すべき理由がない旨の処分の取消請求控訴事件(原審・熊本地方裁判所平成16年(行ウ)第3号)

裁判年月日

 平成18年10月24日

裁判所名

 福岡高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 法人税の確定申告における所得税額控除について法人税法68条3項に規定された「当該金額として記載された金額を限度とする」の趣旨及び意義 
2 法人税の確定申告における所得税額控除について計算誤り等があるとしてした更正の請求に対して,更正をすべき理由がない旨を通知する処分がされ,当該更正の請求に係る誤りを是正しないままされた更正処分の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 法人税法は,所得税額控除制度の適用を受けるかどうかを納税者である法人の自由な選択にゆだね,納税者である法人に対してこの制度の適用を受けることを選択することにより一定の便益を供与するとともに,これにより租税債権を早期に,かつ簡便な手続により確定させることを意図したものにほかならないのであり,この制度の趣旨目的や意義に照らせば,法人税法68条3項の文言はできる限り厳格に解釈されるべきは当然であるが,法人が自ら記載した当該金額を変更(増額)することは絶対に認められないとするのも極論に過ぎて相当ではなく,例えば,当該金額とその計算に関する明細の記載との間に明らかな齟齬がある場合において,全体的な考察の結果,明細の記載に基づいて転記をする際に誤記したか,あるいは違算により当該金額の記載を誤ったことが明白であるというようなときには,その金額の記載を合理的に判断して,本来あるべき正しい金額が記載されているものとして処理すべきであり,また,法人税法68条4項は,これら金額の全部又は一部につき記載がない確定申告書の提出があった場合においてさえも,その記載がなかった金額について同法1項の規定を適用することができるとして,例外的にこの制度の適用を受けることができる余地を認めているのであるから,この場合との均衡を図る意味でも,当該金額を本来あるべき金額よりも過少な額にとどめることになった法令解釈の誤りや計算の誤りが「やむを得ない事情」の故にもたらされたものであると認められるときには,例外的に国税通則法23条1項に基づきその更正の請求が許されるべきである。 
2 法人税の確定申告における所得税額控除について計算誤り等があるとしてした更正の請求に対して,更正をすべき理由がない旨を通知する処分がされ,当該更正の請求に係る誤りを是正しないままされた更正処分の取消請求につき,法人税法68条3項の文言はできる限り厳格に解釈されるべきは当然であるが,例えば,当該金額とその計算に関する明細の記載との間に明らかな齟齬がある場合において,全体的な考察の結果,明細の記載に基づいて転記をする際に誤記したか,あるいは違算により当該金額の記載を誤ったことが明白であるというようなときには,その金額の記載を合理的に判断して,本来あるべき正しい金額が記載されているものとして処理すべきであり,また,当該金額を本来あるべき金額よりも過少な額にとどめることになった法令解釈の誤りや計算の誤りが「やむを得ない事情」の故にもたらされたものであると認められるときには,例外的に国税通則法23条1項に基づきその更正の請求が許されるべきであるとした上,前記確定申告に係る確定申告書の記載の誤りは,単純な転記ミスや計算ミスをした結果,当該金額の記載を誤った訳ではないから金額の記載を合理的に判断すべき場合には当たらないことは明白であり,また,同確定申告書の作成について税理士の関与を求めることもないまま,社内の財務部に所属する担当者に任せきりにしていたことが一因であり,前記法人の規模,内容をも併せ考慮するならば,同確定申告書の記載の誤りが「やむを得ない事情」の故にもたらされたものであるともいえないとして,前記請求を棄却した事例

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