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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ス)16

事件名

 執行停止申立却下決定に対する抗告事件(原審・横浜地方裁判所平成18年(行ク)第18号,同第27号)

裁判年月日

 平成19年3月29日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市長が,地方自治法244条の2第3項に基づき,社会福祉法人に対してした,保育園の指定管理者指定処分について,前記保育園に入所している児童及びその保護者がした,前記指定処分の取消しを求める訴えを本案とする前記処分の効力停止の申立てが,却下された事例

裁判要旨

 市長が,地方自治法244条の2第3項に基づき,社会福祉法人に対してした,保育園の指定管理者指定処分について,前記保育園に入所している児童及びその保護者がした,前記指定処分の取消しを求める訴えを本案とする前記処分の効力停止の申立てにつき,児童福祉法24条の規定及び平成9年の同法改正時の経緯や関連通達等にかんがみるならば,同条は保護者に対し,その監護する乳幼児にどの保育所で保育の実施を受けさせるかを選択する機会を与え,市町村はその選択を可能な限り尊重すべきものとして,この保育所を選択し得るという地位(保育所選択権)を保障するものと解され,前記保育所選択権は,当然のことながら,入所時に定められている保育期間にわたってその監護する乳幼児に対して保育の実施を行う保育所を選択するということであるから,入所後における当該期間にわたる保育の実施を求め得る地位,利益を含んだものということができ,また,前記のようにして選択された保育所で保育の実施を受けている乳幼児は,保育の実施対象であるとともに,その利益を享受する主体であり,その健やかな育成を旨として保育所の選択が行われたものとみるべきものであるから,当該乳幼児が入所時に定められている保育期間にわたって当該保育所で保育の実施を受けられるという利益は,保護者が当該保育所を選択したことによる反射的な利益と把握すべきものではなく,固有の法的利益を有すると解されるが,前記保育園も市の公の施設であり,その管理,運営は一定の限度で市の判断にゆだねられているものと解されるところ,前記保育園に入所している児童及びその保護者の権利,利益もいささかの変更も許されない絶対的なものとも解されないことからすると,前記保育園における保育内容に変更が生じるという,そのこと自体をもって,行政事件訴訟法25条2項所定の「重大な損害」と認めることは困難であり,また,前記保育園において保育を受けている児童らが受ける環境の変更による影響を軽減するための措置が取られており,その成果が一定程度認められること等を考慮すると,前記社会福祉法人による管理開始により,児童らが受ける影響は保育士が全員交替することを考慮しても,大きなものであるとはいえず,児童らが重大な悪影響を受けるとまではいえないから,「重大な損害」が生じるとはいえないとして,前記申立てを却下した事例

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