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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)653

事件名

 建築認定処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成19年6月29日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び同区建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認の各取消しの訴えにおいて,当該外国国家は,我が国の民事裁判権及び行政裁判権から免除されないとされた事例 
2 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び東京都の特別区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認が,いずれも抗告訴訟の対象となる処分に当たるとされた事例 
3 東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定の取消請求が,棄却された事例 
4 東京都の特別区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認は,建物の建築主が建築確認の申請をしていないにもかかわらずされたもので違法であるとしてした同確認の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び同区建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認の各取消しの訴えにおいて,当該外国国家に我が国の民事裁判権及び行政裁判権が及ぶかにつき,外国国家の行為が,主権的行為ではなく私法的ないし業務管理的な行為であると認められる場合には,我が国による民事裁判権又は行政裁判権の行使が当該外国国家の主権を侵害するおそれがあるなど特段の事情がない限り,当該外国国家の行為について当該外国国家を相手方としてされた処分が違法であるか否か等が裁判手続において争われれば,我が国の裁判所は,これについて判断することができるとした上,既に我が国において使節団の公館に供するための建物を取得してこれを利用している外国国家が,これに替えて別の建物を取得する行為を直ちに外交活動の一環であるということは当然にはできず,これを外交活動の一環であると認めるべき特段の事情もうかがわれないから,同行為は,外国国家のみが行い得る行為ではなく,私人が行うのと同様の行為であると認められるとして,前記各取消しの訴えにおいて,当該外国国家は,我が国の民事裁判権及び行政裁判権から免除されないとした事例 
2 外国国家に対し,東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定及び東京都の特別区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかにつき,まず,前記条例4条3項に基づく認定の処分性について,同項に基づく認定の申請をした者は,知事が同条1項及び2項の規定を適用しない旨の認定をした場合には,建築基準法42条1項の規定する幅員4メートル(特定の区域内では6メートル)以上の道路に2メートル以上接しなければならないという同法43条1項本文所定の制限を受けるにとどまるのに対し,知事が前記認定をしなかった場合には,前記条例4条1項及び2項の規定に基づくより厳しい接道の規制を受けることとなり,その結果,建築基準法43条1項所定の接道の要件を満たすものの,前記条例4条1項及び2項所定の幅員6メートル以上の道路への接道要件を満たすことができない場合には,建築確認を受けることができないことになるから,知事の前記条例4条3項に基づく認定には前記のような法的効果が付与されており,同認定は,申請者の法的地位に直接影響を与えるものであり,申請者個々人に対する権利義務を形成し,又はその範囲を確定するものというべきであるから,処分に当たるというべきであるとし,次に,外国国家を相手とする処分の処分性について,外国国家を相手方とする処分は,これに服する旨の当該外国国家の同意がある場合に限り,有効な処分ということができると解するのが相当であるところ,利益処分の相手方となろうとする外国国家と当該処分がされることによって法律上不利益を受ける者又はそのおそれのある者との間に当該処分がされることをめぐる紛争が存在するという状況の下において,当該外国国家が当該処分をすることを求める旨の申請を書面によって行った場合には,飽くまでも国際儀礼上の観点からされたものにすぎないと認められる特段の事情がない限り,当該外国国家の行為は,当該処分に服する旨の当該外国国家の同意に当たるとした上,前記認定がされる前から,前記認定の相手方である前記外国国家と前記認定がされることによって法律上不利益を受ける者又はそのおそれのある者との間には前記認定がされることをめぐる紛争が存在していたということができ,かつ,その状況下において,同外国国家が前記区長に対し前記認定を求める申請書を提出する方法によって前記認定をすることを求める旨の申請を行っているから,前記認定に服する旨の同外国国家の同意があるといえ,また,同申請には,前記認定に引き続いてされるはずである建築基準法6条1項に基づく建築確認に係る行政庁である建築主事が一方的にする意思決定の結果を尊重し,これに従う旨の同外国国家の意思が明確に表明されていると認めるのが相当であり,同建築確認に服する旨の同外国国家の同意があるというべきであるとして,前記認定及び確認は,いずれも抗告訴訟の対象となる処分に当たるとした事例 
3 東京都の特別区の長がした東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく認定の取消請求につき,同条各項の趣旨及び規定の仕方に照らすと,同条3項の認定をするかどうかの判断は,建築物の構造及び規模,敷地の形状,敷地内の空地等の状況,敷地外の周囲の土地の状況,敷地の周囲の市街地の密集の度合い等を総合的に考慮した上での,行政庁の専門的かつ技術的な裁量にゆだねられていると解されるとした上,前記認定に係る建物の延べ面積は約6700平方メートルで,高さが約25メートルと,同条例4条2項に規定する基準に比べても相当大きいものであること,同建物の周辺には,学校法人や社会福祉法人が存在することなどを考慮しても,同建物の災害時における同建物居住者等の避難及び通行の安全は十分に確保されており,また,消化活動等への支障があるということはできず,同建物に災害が生じた場合に,同建物やその居住者及びこれに隣接する建築物等やその居住者等に重大な被害が及ぶと認めることはできないのであるから,前記認定が行政庁に認められた裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用したものであるとはいえないとして,前記請求を棄却した事例 
4 東京都の特別区の建築主事がした建築基準法6条1項に基づく確認は,建物の建築主が建築確認の申請をしていないにもかかわらずされたもので違法であるとしてした同確認の取消請求につき,建築基準法は,同法6条1項の建築物の構造等に関する裁定基準を定めて国民の生命,健康及び財産を保護するために建築物の建築等を一般的に禁止した上で,国,都道府県又は建築主事を置く市町村以外のものを建築主とする建築物については,当該建築主から申請のあった建築物のうち,建築主事が同法6条1項にいう建築基準関係規定に適合することを確認したものについてのみ建築等を認めることとしており,そうすると,当該建築主が当該建築物を建築する予定がある場合には,当該建築物が建築基準関係規定に適合してさえいれば,たとえ当該建築物について建築主事に対する確認の申請がされていなかったとしても,当該建築物について建築主事が建築基準関係規定に適合する旨の確認をすることは認められるべきであるから,当該建築物について建築主事に対する確認の申請がされていないことは,当該建築物について建築主事がした建築基準関係規定に適合する旨の確認を違法とする理由にはならないとして,前記請求を棄却した事例  

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