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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成10(行ウ)11

事件名

 違法確認及び損害賠償請求事件

裁判年月日

 平成19年8月8日

裁判所名

 水戸地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 不納欠損処理に係る市税債権について徴税事務を怠り,差押え等の時効中断措置をとらないまま消滅時効を完成させたことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,当時の市長個人及び前記処理後に就任した市財務部長個人に対してされた損害賠償請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 不納欠損処理に係る市税債権について徴税事務を怠り,差押え等の時効中断措置をとらないまま消滅時効を完成させたことが違法であるとして,地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき,市に代位して,当時の市長個人及び前記処理後に就任した市財務部長個人に対してされた損害賠償請求につき,前記市税債権のうち,?元市長らが各職に就任した時点において既に消滅時効が完成していた案件(以下「時効既完成案件」という。)については,何らかの時効中断措置をとることはおよそ不可能であるから,元市長らに不法行為が成立する余地はなく,?市議会が前記処理を含む決算を認定した時点において未だ消滅時効が完成していなかった案件(以下「時効非完成案件」という。)については,それまでの期間に時効中断措置をとっていなかったとしても,消滅時効が完成していない以上は,市に何らの損害も生じていないから,その措置を違法であるとはいえず,?滞納に係る税額が,市において督促から滞納整理,催告及び滞納処分に至るまでの滞納整理に関する一連の事務につき要する平均費用を下回る案件(以下「少額案件」という。)については,人員及び予算に限りがあることを前提に徴税事務又は行政事務の全体を適正かつ効率的に遂行しなければならないという市における地方行政の実状に照らせば,徴収に要する労力,費用を無視してでも必ず全額を徴収すべきとすることは不可能を強いるものであるから,徴税のために合理的と認めるに足りる程度の措置が講じられている限りは,仮に差押え等が実施されることのないまま消滅時効が完成するに至ったとしても徴税事務の監督者たる元市長らが違法にその管理を怠っていたとはいえないところ,少額案件については,いずれも督促状の発付若しくは文書,電話又は訪問による催告等の措置が講じられていたことから,元市長らが違法にその管理を怠っていたとはいえず,?時効既完成案件,時効非完成案件又は少額案件のいずれにも該当しない案件については,督促状の発付,文書,電話又は訪問による催告,交付要求若しくは資産調査等の徴税に向けられた相応の措置が講じられたにもかかわらず,滞納者に関し,勤務先,住居又は所在の不明,生活の困窮,倒産,所得の有無の不明又は死亡等の事情があったため,結果的に徴収が著しく困難な状態に陥っていたなど,徴税に向けられた相応の努力が払われたにもかかわらず,事案ごとの個別事情により徴収が著しく困難な状態に至っていたと認められ,限りある人員及び予算の中で適正かつ効率的に徴税事務又は行政事務を遂行しなければならないという地方行政の実状に照らせば,さらに差押え等の措置が実施されることのないまま消滅時効が完成するに至ったとしてもやむを得ないものというべきであるから,前記案件につき消滅時効が完成したことをもって,直ちに元市長らが違法にその管理を怠っていたとはいえないとして,前記請求をいずれも棄却した事例

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