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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行コ)17

事件名

 損害賠償請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成16年(行ウ)第65号)

裁判年月日

 平成19年10月31日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 茨木市報酬及び費用弁償条例(昭和40年茨木市条例第17号,平成15年茨木市条例第36号による改正前)9条に基づく専門委員及び非常勤の嘱託員の範囲及び報酬の支給額に関する内規(昭和40年茨木市訓令第9号,平成16年茨木市訓令第10号による改正前)により市の非常勤の嘱託員に報酬を支給したことは地方自治法の定める給与条例主義に違反し違法であり,市は同嘱託員に対して支給した報酬相当額の損害を被ったなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求が,棄却された事例

裁判要旨

 茨木市報酬及び費用弁償条例(昭和40年茨木市条例第17号,平成15年茨木市条例第36号による改正前)9条に基づく専門委員及び非常勤の嘱託員の範囲及び報酬の支給額に関する内規(昭和40年茨木市訓令第9号,平成16年茨木市訓令第10号による改正前)により市の非常勤の嘱託員に報酬を支給したことは地方自治法の定める給与条例主義に違反し違法であり,市は同嘱託員に対して支給した報酬相当額の損害を被ったなどと主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当時の市長個人に損害賠償の請求をすることを市長に対して求める請求につき,地方自治法203条,204条及び204条の2の各規定並びに地方公務員法24条6項,25条の各規定の趣旨及びその沿革等にかんがみると,これらの規定が普通地方公共団体の職員の給与に関していわゆる給与条例主義を定めている趣旨は,給与の額及びその支給方法の決定を普通地方公共団体の住民の直接選挙により構成される議事機関である議会が制定する条例にゆだねることにより,給与に対する民主的統制を図り民主主義的な基礎を与えるとともに,普通地方公共団体の職員に対して法定の種類の給与を権利として保障するものであると解されるところ,この給与条例主義においても,基本的事項の委任や白紙委任等は許されないとしても,条例によって一定の基準の下に具体的,細目的事項を下位の法令に委任することは,任命権者の恣意的な決定を排するものであって,かつ,給与条例主義の趣旨を没却するものでない限り,当然に許容されるものと考えられるとした上,前記条例においては,法律,条例に根拠があり報酬額を予め確定し得る非常勤職員については直接に報酬額を定め,その他の非定型的,臨時的で報酬額を予め定め難い非常勤の嘱託員については,報酬の限度額,支給の方法その他の基本的な事項については条例に規定し,一定の限度額の範囲で任命権者に具体的な額の決定を委任しているものであり,その外に別途茨木市非常勤嘱託員設置要綱を制定しているのであるから,前記条例の規定する委任の在り方には,十分な合理性が認められるものであって,任命権者の恣意的な決定を排するものであり,かつ,給与条例主義の趣旨を没却するものでないと考えられるので,委任の限界を超えるものではなく当然に許容されるものであるといわなければならず,また,前記嘱託員に対する嘱託は,十分な必要性と合理性が認められ,前記要綱の定める非常勤の嘱託員の任用基準を充たすものでもあるから,任命権者である市長の裁量の範囲内の行為であって,違法と評価されるものではないなどとして,前記請求を棄却した事例

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