裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行コ)153

事件名

 相続税更正処分取消等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成18年(行ウ)第115号)

裁判年月日

 平成22年5月20日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 審査請求についての裁決を経ずに提起された相続税の更正処分等の取消しを求める訴えにつき,前記更正処分等に係る審査請求はされた上で取り下げられているところ,この取下げは担当官の誤った教示によって陥った錯誤に基づくもので無効であるから,前記訴えは適法であるとの主張が排斥された事例
2 被相続人の財産に係る相続税につき,他の相続人との間に訴訟上の和解が成立したとして,主位的に相続税法55条,同32条1号に基づいて,予備的に国税通則法23条2項1号に基づいてした更正の請求に対して,税務署長がした更正に理由がない旨の通知の取消請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 審査請求についての裁決を経ずに提起された相続税の更正処分等の取消しを求める訴えにつき,前記更正処分等に係る審査請求はされた上で取り下げられているところ,この取下げは担当官の誤った教示によって陥った錯誤に基づくもので無効であるから,前記訴えは適法であるとの主張について,納税者による取下げの意思表示が要素の錯誤に基づくものである場合には,民法95条により納税者に重過失がない限り当該取下げは無効になり,結果的に審査請求がなお係属しているものと評価し得るというべきであり,この場合,納税者は,国税通則法115条1項1号にいう「審査請求がされた日の翌日から起算して三月を経過しても裁決がないとき」に該当するとして,不服申立ての対象となっていた処分の取消しを求めて出訴することができ,また,審査請求の取下げが税務官署の責任ある者の誤った教示に起因するなど特段の事情がある場合には,当該納税者は,同項3号にいう「裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき」に該当するとして,やはり審査請求についての裁決を経ることなく,適法に当該処分の取消訴訟を提起することができると解する余地があるとした上,前記取下げは更正処分等を確定させても特段の弊害はなく,むしろ手続的により簡明になり望ましいとの趣旨でされたものと推認することができるから,前記取下げを要素の錯誤に基づくものとして無効と評価することはできず,また,前記特段の事情も認められないとして,前記主張を排斥した事例
2 被相続人の財産に係る相続税につき,他の相続人との間に訴訟上の和解が成立したとして,主位的に相続税法55条,同32条1号に基づいて,予備的に国税通則法23条2項1号に基づいてした更正の請求に対して,税務署長がした更正に理由がない旨の通知の取消請求につき,相続税法32条1号は,当該財産の分割によって相続人各自が取得した財産に係る課税価格が法定相続分の割合に従って計算された課税価格と異なることになったことが要件とされるところ,前記和解は,相続人が各自において取得する遺産を具体的に確定するための基礎にもなり得ないから,同号の要件に該当するものとはいえないなどとして,前記主位的請求を棄却し,また,前記和解は,被相続人及びその妻の死亡を契機に相続人である納税者らと他の相続人との間で発生した遺産をめぐる一連の法的紛争を最終的に解決することを目的として,被相続人及びその妻の各遺産に関する当該納税者らと他の相続人との間の権利義務関係の一切を将来に向かって不可分的かつ全体的に変更し,確定させたものであって,前記和解中被相続人に係る部分だけを抽出してその法的性質を遺産分割合意又はこれと同視すべきものと評価することは不可能であるから,前記和解が国税通則法23条2項1号にいう「更正又は決定に係る課税標準等又は税額の基礎となった事実に関する訴えについての判決と同一の効力を有する和解」に該当するということはできないとして,前記予備的請求を棄却した事例

全文