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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行コ)265

事件名

 各生活保護変更決定取消請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成19年(行ウ)第75号,第94号ないし第102号,104号,105号)

裁判年月日

 平成22年5月27日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 厚生労働大臣の定める生活保護基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定により70歳以上の被保護者に対する老齢加算が廃止されたことに伴い,福祉事務所長が生活保護法25条2項に基づいてした老齢加算を減額する旨の変更決定が,適法とされた事例

裁判要旨

 厚生労働大臣の定める生活保護基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定により70歳以上の被保護者に対する老齢加算が廃止されたことに伴い,福祉事務所長が生活保護法25条2項に基づいてした老齢加算を減額する旨の変更決定につき,前記保護基準の設定は,一応,前記大臣の合目的な裁量に委ねられており,その判断は,現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法及び生活保護法の趣旨,目的に反し,法律によって与えられた裁量権の範囲を超え又は裁量権を濫用した場合に限り違法として司法審査の対象となるところ,老齢加算は,昭和35年度から平成18年度まで45年以上にわたって継続されてきたものであり,この間,前記保護基準において,70歳以上の高齢の被保護者については,基準生活費と老齢加算を併せて,同法8条2項に規定する「最低限度の生活を満たすに充分なものであって,且つ,これをこえないもの」とされてきたのであるから,前記保護基準を改定し,老齢加算を廃止するについては,相応の合理的理由があることを要すると解するのが相当であるとした上,前記改定は,今日においては老齢加算に相当するだけの特別の需要が失われていることを基礎付ける事情があることに加え,社会経済情勢の変化や我が国の財政状態を背景として行われたものであるから,前記大臣にとって我が国の経済力や財政状態がしからしむるやむを得ない選択であったというほかなく,前記改定には相応の合理的な理由があるとするのが相当というべきであり,また,前記被保護者の生活状況に照らしても,老齢加算の廃止による減額後の保護の内容が「健康で文化的な最低限度の生活」の需要を満たしていないとまではいえないとして,前記決定を適法とした事例

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