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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)719等

事件名

 関税更正処分取消等請求事件

裁判年月日

 平成23年3月25日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 化粧品等の輸入,卸売販売等の事業を営む会社が,自己の行った輸入取引に関して,関税定率法に規定する輸入取引の売手はアメリカ合衆国所在の製造業者であるとして関税,消費税及び地方消費税の申告納税を行ったところ,輸入取引の売手は前記会社の代理人と称する同国所在の同社関連会社であるなどとしてされた更正処分等が,適法とされた事例
2 関税定率法4条1項に規定する「輸入貨物に係る輸入取引がされた時」の意義につき,輸入貨物が本邦に輸入されるまでの間に複数の売買取引がある場合におけるファーストセール理論の採否

裁判要旨

 1 化粧品等の輸入,卸売販売等の事業を営む会社が,自己の行った輸入取引に関して,関税定率法に規定する輸入取引の売手はアメリカ合衆国所在の製造業者であるとして関税,消費税及び地方消費税の申告納税を行ったところ,輸入取引の売手は前記会社の代理人と称する同国所在の同社関連会社であるなどとしてされた更正処分等につき,関税定率法4条1項にいう「輸入取引」に当たる取引とは,現実に当該輸入貨物が本邦へ輸入されることとなった取引をいうと解すべきであるところ,「輸入取引」の認定に当たっては,当該取引における「売手」と「買手」が実質的に自己の計算と危険負担の下に取引を行っているかが重要な要素となるというべきであり,具体的には,「売手」と「買手」がそれぞれ自ら輸入取引における輸入貨物の品質,数量,価格等を取り決め,瑕疵,数量不足,事故,不良債権等の危険を負担することを要するというのが相当であって,これと同様の内容を定めた関税定率法基本通達4−1(1)及び4−2(1)の内容は正当であり,また,貨物の輸入に当たり,輸入者の「代理人」である旨の合意の下に活動している者が,真実は自らの計算と危険負担の下に実質的には「売手」として活動しているような実態がある場合には,たとえその者を「代理人」とする合意があったとしても,その者を「代理人」と認めることはできず,その者を「売手」とする「輸入取引」が輸入者との間にあると認めるのが相当であり,その場合の課税価格は,輸入者からその者に対してされた現実支払価格を基に計算すべきであるとした上,前記関連会社は,自己の計算と危険負担の下に前記会社と取引を行っていたものと認められ,同社の代理人としての役割を果たしていたと認めることはできず,同社と前記関連会社との間に売買があったと認めるのが相当であるなどとして,前記更正処分等を適法とした事例
2 関税定率法は,関税の賦課対象を,貨物の輸入時点においてもたらされた当該貨物の付加価値全体であって買手が負担するものにできるだけ近いものとしようとしていると解されることから,同法4条1項に規定する「輸入取引」に当たる取引とは,現実に当該輸入貨物が本邦へ輸入されることとなった取引をいうと解するのが相当であり,輸入貨物が本邦に輸入されるまでの間に複数の売買取引があるような場合には,たとえその複数の取引の当初の段階から当該貨物が本邦向けに輸出されることを前提としたものであったとしても,「輸入取引」に当たるのは,当該貨物が本邦の領域内にもたらされる現実の取引をいうと解するのが相当であるから,ファーストセール理論(輸入貨物が輸入国市場向けに特別に製造され,複数の売買取引を経て輸入されるに至った場合には,当該貨物が輸出されることが確定した時点以後の最も安い取引価格,すなわち,流通経路の最初の取引価格を関税評価の基礎とするというもの)を採用することはできない。

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