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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成25(行コ)60

事件名

 損害賠償等(住民訴訟)請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成22年(行ウ)第615号)

裁判年月日

 平成25年8月8日

裁判所名

 東京高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 住民訴訟の係属中にされたその請求に係る村の損害賠償債権を放棄する旨の村議会の議決が適法であり,当該放棄が有効であるとされた事例

裁判要旨

 村が非常勤の職員に報酬及び費用弁償以外の手当等を支給したことが地方自治法に違反するなどとして提起された住民訴訟の一部を認容する控訴審判決の言渡し後,上告受理申立て中にされたその請求に係る村長個人に対する損害賠償債権を放棄する旨の同村村議会の議決につき,前記職員の雇用は村の財政健全化の一環として行われたもので,前記職員に対する貸金及び諸手当の支給は,村の歳出削減にとって必要かつ有益なものであり,その額もその職務に照らして不当に高額というものではなく,そのような諸手当の支給は村における従前の取扱いを踏襲したにすぎないものであって,村の関係者の多くが前記職員に対する諸手当の支給を村長の個人的な過失ではなく,村としての組織の責任であると受け止めていること,前記債権放棄が,裁判所の司法判断を軽視してされたものではなく,司法判断とは別の,村の実情を最もよく知る議会の政治的判断としてされたものであること,前記債権を行使した場合,村が積み上げてきた行財政改革にも水を差す結果になるおそれがあるなどの弊害が生ずるのに対して,前記債権を放棄した場合でも,村の財政に及ぼす実際の影響は限定的なものである上,放棄によって前記職員や村長個人に実質的に不当な利益を得させるものではなく,弊害が少ないと考えられること,村では,先行の控訴審判決の判断を真摯に受け止め,これを踏まえて是正措置等を講じてきていることなどの判示の事情の下では,村が村長個人に対する当該債権を放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であるとは認め難く,普通地方公共団体の議決機関としての議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえないとして,前記放棄の議決は適法で有効であるとした事例

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