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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成24(行ウ)288

事件名

 時効特例給付不支給処分取消請求事件

裁判年月日

 平成26年5月29日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 年金記録の統合が厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律1条にいう「記録した事項の訂正」に当たらないとされた事例
2 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金に係る支分権の消滅時効の起算点
3 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金の支払請求に対する消滅時効の主張が信義則上許されないとされた事例

裁判要旨

 1 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律1条にいう「記録した事項の訂正」に当たるのは,年金の受給権の有無ないし年金額に影響を及ぼす訂正に限られるから,2つの期間の年金記録が確認され,これによって新たに受給資格を満たしていることが判明した場合であっても,2つの期間の統合という年金記録の訂正自体では受給権の有無及び額に変動を及ぼさない場合には,同条にいう「記録した事項の訂正」に当たらない。
2 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金に係る支分権の消滅時効の起算点は,会計法31条2項が準用する民法166条1項によって「権利を行使することができる時」となるところ,基本権の発生後,受給権者は,裁定の請求をすることにより,いつでも支分権に基づき年金の支払を受けることができるのであるから,基本権が客観的に発生した以降の各支払期日の初日から,その支払期日に係る支分権の消滅時効が進行し,5年の経過により順次消滅する。
3 厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付に係る時効の特例等に関する法律による改正前の厚生年金保険法に基づく遺族年金の支払請求について,当該受給権者が10回程度も訪れ,問い合わせや相談等を行った社会保険事務所の各担当者が適切な調査を行っておれば被保険者の年金記録が発見された蓋然性が高かったにも関わらず,これら各担当者から,その都度,当該年金記録は見当たらないとの回答を受けていたものであって,単に一担当者による不適切な取扱いを超えた社会保険事務所の組織全体により繰り返しされた不適切な取扱いと評価でき,そのため当該受給権者が裁定請求を行うことが極めて困難であったと認められ,当該受給権者の重要な権利に関し,違法な取扱いをし,その行使を著しく困難にさせた結果,これを消滅時効にかからせたという極めて例外的な場合に当たるとして,当該遺族年金の支払請求に対する消滅時効の主張が信義則に反し許されないとされた事例

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