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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成27(行ウ)513

事件名

 税理士懲戒処分取消請求事件

裁判年月日

 平成30年8月2日

裁判所名

 大阪地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 公認会計士でもある税理士に対し自己脱税を理由に税理士業務の停止処分がされた後に当該業務停止期間が経過した場合の当該処分の取消しを求める訴えの利益
2 原告が戸建住宅とマンションの一室を共に居住の用に供していた場合において,マンションの一室は租税特別措置法施行令23条1項の準用する同令20条の3第2項の「主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」に該当しないとして,その売却につき租税特別措置法35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除は認められないとされた事例
3 マンションの一室の売却につき租税特別措置法35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除が認められないにもかかわらず,その適用があるものとして,その所在地を住所とする住民票の写しを添付して確定申告をした行為が自己脱税に当たるとしてされた税理士業務の停止処分につき,国家賠償法上の違法がないとされた事例

裁判要旨

 1 公認会計士でもある税理士が自己脱税を理由に税理士業務の停止処分を受けた場合,当該処分を受けた者は,公認会計士に対する懲戒処分について金融庁が公表している基準に基づき,将来,公認会計士業務の停止処分を受ける可能性があるが,同基準があることをもって,処分基準に処分を受けたことを理由とする不利益な取扱いが定められているということはできないから,当該業務停止期間が経過したときは,当該処分を受けた者は,同処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有しない。
2 原告の妻は戸建住宅を主たる生活の拠点としていたことなど専業主婦である妻の生活実態からすれば原告がマンションの一室を定期的に利用していたといってもその頻度や滞在時間はおのずから一定の範囲に限られていたものと考えられ,そのことは電気・ガス・水道の使用量からも裏付けられること,原告夫妻の住民票の異動の経緯のほか原告が税理士及び公認会計士の登録上の住所を戸建て住宅の所在地としていたことなどからすれば原告自身戸建住宅が自らの主たる生活の拠点であることを社会的・対外的に明らかにしていたといえることなど判示の事情の下では,戸建住宅とマンションの一室とを比較検討した場合に,マンションの一室が原告の主たる生活の拠点として利用されていたと認めるのは困難であり,マンションの一室は租税特別措置法施行令23条1項の準用する同令20条の3第2項の「主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋」に該当しないから,その売却につき租税特別措置法35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除は認められない。
3 原告はマンションの一室が主たる住居に該当しないことを認識していたものであって,少なくとも確定申告を行うに当たり居住の実態を反映しない住民票の写しを添付した原告の行為は仮装行為と評価せざるを得ないから,租税特別措置法35条の居住用財産の譲渡所得の特別控除が認められないにもかかわらず,その適用があるものとして,その所在地を住所とする住民票の写しを添付して確定申告をした行為が自己脱税に当たるとして原告に対してされた税理士業務の停止処分が国家賠償法上違法ということはできない。

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