上メニューへスキップ  右メニューへスキップ  メインコンテンツへスキップ(スクリーンリーダーをご利用の方、キーボード操作の方のアクセシビリティ向上のため設置)





メニューを飛ばす


裁判所トップページ > 各地の裁判所 > 京都地方裁判所・京都家庭裁判所 > 京都地方裁判所について > 広報活動 > 裁判官の声(岩城裁判官)


京都地方裁判所裁判官の声

 京都地方裁判所では,裁判官が,朝日新聞京都版(不定期金曜朝刊)に連載中の「司法Voice」という記事に,「司法の現場で心に残ったエピソード」を寄稿しています。
 今回,朝日新聞データベースセンターから許可を得て,これらの記事を「京都地方裁判所裁判官の声」として,当庁HPで改めて紹介させていただくことになりました。

「井戸を掘り」紛争解決目指す(岩城裁判官,平成30年1月26日掲載)

 「井戸を掘れ」。我妻栄(1897~1973)という昭和の民法学者が教え子に贈った言葉です。
 学校を出て社会で働く際には他の人の考えを借りてくるばかりではなく,一つの問題を自分自身でじっくり考えてみる必要があることを我妻は「井戸を掘れ」と表現したのでした。
 一方,我妻は仕事をすることを「池をつくる」と言いました。自分の井戸の水だけでは池にくまなく水をたたえ,乾いた大地を緑に変えることはできないように,自分の知識や経験だけでは仕事はできないというのです。
 憲法は「裁判官の独立」を定めています。裁判官は他の人の考えに便乗するのではなく,自分で考え,自分の言葉で意見を言わなければなりません。井戸を掘る仕事なのです。
 井戸掘りには黙々とツルハシを振るう孤独な印象があります。法壇の上で黒い法服を着た裁判官にはぴったりの言葉のように思われるかもしれません。
 しかし,一人では池をつくれないように,裁判官も一人だけで紛争を解決するわけではありません。法廷で意見を聴き,あるいは他の裁判官や裁判員との評議で頭を寄せ合って考えることで,より良い解決策を見いだすことができます。
 他の人の意見を聴き,他の井戸の水を味わうことは,自分の考えが間違っていないかを見極め,自分の井戸を掘り進める手掛かりにもなります。
 紛争を適切に解決して,紛争に悩み疲れている方々に心安らかな日々を取り戻していただくにはその方々を含め,多くの人の言葉をじっくりと聴くことが大切なのだと私は考えています。多くの人の言葉を基に熟慮を重ね,自分の言葉を発するという裁判官の井戸掘りは決して孤独ではない,多くの人との協働作業なのです。
 紛争に悩み疲れた方々の心に緑が満ち,花が咲くことを願って私たちは今日も井戸を掘り続けています。