p1 第30回さいたま地方裁判所委員会【議事概要】 第1 日時    平成28年11月24日(木)15:00〜17:00 第2 場所    さいたま地方裁判所大会議室 第3 出席者   【委員】   荒木直人,金井久男,小嶋一晃,重川純子,設楽あづさ,関根正昌,野 輝久,山光明,田中歳光,内藤晋太郎,中山福二,布川賢二,堀光美知子, 深山卓也〔委員長〕(五十音順,敬称略)   【オブザーバー】    (刑事部)富澤誠,西尾幸美,立原優樹    (民事部)柳下俊一    (事務局)中田康夫,中村陽史,清水敦子,田村光希雄,道田進 第4 議題 「裁判員裁判について」 第5 議事  1 開会 2 委員交代の紹介及び各委員の自己紹介(金井委員,小嶋委員,設楽委員,布 川委員)  委員長から,前回委員会から本委員会までの間の阿波委員,高橋委員の退任 及び小嶋委員,布川委員の任命について紹介があり,小嶋委員,布川委員のほ か,任命後初めての出席となった金井委員,設楽委員の自己紹介があった。  3 議題「裁判員裁判について」 (1) 模擬の裁判員選任手続     委員は,候補者待機室に移動し,模擬の裁判員選任手続を体験した。   (2) 質疑応答 (委 員 長)まずは,模擬選任手続に参加した率直な感想をお聞かせくださ い。 (委 員)これまで選任手続に来た者の中で,2回,3回と呼出しを受けた p2 にもかかわらず裁判員に選ばれなかったと不満を述べた者はいる か。過去に呼出しを受けた人は,裁判所に行かずに裁判員を断わる ことのできる制度はあるか。 (委 員)実際に裁判所に足を運んだ後に裁判員の抽選に外れた者は,それ 以降,年内は,裁判員候補者から除外されることとなっている。 (委 員)一度呼出しを受けて抽選にはずれた人は,また呼び出されること はないということか。 (委 員 長)翌年以降の裁判員候補者名簿に再び名前が掲載された場合には, 呼出しを受ける可能性はある。しかし,その可能性は相当低いと考 えられる。 (委 員)過去に裁判員候補者に選ばれた者は,過去に候補者を経験したと いう理由で辞退することはできないのか。 (委 員)裁判員候補者として,選任手続に来た者は,翌年辞退することが できる。裁判員に選ばれた者は,その後5年間辞退することができ る。 (委 員) 選任の抽選を別室で行うという配慮は,候補者のプライバシーの 観点から,ある程度は理解できる。しかし,選ばれた裁判員の番号 を候補者全員の前で発表すると,抽選で外れた候補者が,裁判員の 情報をインターネットに書き込む危険性もあるのではないか。例え ば,裁判員の番号を全員の前で発表するのではなく,帰りに裁判員 に選ばれた人だけに声掛けを行うなどの方法で,抽選に外れた候補 者に分からない方法を検討してはどうか。 (委 員)候補者にとって,パソコンのシステムを利用して抽選をするとい うのに納得がいかないという人もいるのではないか。くじ引のよう に自分でくじを引くことにすれば,候補者本人にとって,抽選の結 果に納得が行くものとなるのではないか。 (委 員 長)抽選の公平性という観点では,パソコンのシステムを利用する 方法は公平性があるが,例えば,くじを引く場合に誰がどのような 順番で引くかといった,公平性が担保されない面がある。ただし, パソコンのシステムを利用した抽選の仕組みが,一般的に分かりに p3 くいのであろう。 (委 員)抽選の対象となる候補者が20人余しかいないのに,パソコンの システムを使って抽選するのは,大げさではないか。何か作為的な ものがあるからパソコンを利用しているのではないかとの疑念を もつ候補者もいるように思われる。 (委 員)入札手続では,通常,何らかのシステムを利用している。入札で システムを利用する場合,入札者側が任意の3ケタの数字をシステ ムに入力し,入札者が選んだ番号の中から当選者が出るという仕組 みにすることで,公平性をより分かりやすいものにしていると思わ れる。候補者側に好きな番号を選んでもらい,その番号の中から抽 選を行えば,抽選に参加する側の印象も変わるのではないか。 (オブザーバー)裁判員候補者の情報はシステムで管理されており,裁判員 候補者の中には,選任手続期日に出頭して抽選の対象となって名簿 から外れる者,選任手続期日に出頭することなくその事件だけ事前 に辞退が認められて名簿に残る者などがおり,あらゆる情報をシス テムに反映させる必要がある。ある事件の裁判員の選任手続を行っ ているときに別の事件の候補者の選定を行っていることもあり,シ ステムを使用しないで抽選を行い,それを後からシステムに反映さ せようとすると,別の事件で選ばれてはいけない者を選んでしまう 危険がある。システムを利用する理由として,これらの事情がある ことについても御理解いただきたい。 (委 員)今の説明を聞いて納得した。裁判所としては,抽選に外れると年 内はその後候補者に選ばれないというルールや,パソコンのシステ ムで抽選するのは,今説明のあったミスを防止するために必要であ ることについて,きちんと候補者に説明すれば理解を得られるので はないか。 (委 員 長)別室で抽選している間,候補者には休憩時間が20分あるとい うことだが,その間,候補者はどのように過ごしているのか。 (オブザーバー)候補者待機室には雑誌が置いてある。机上にはペットボト ルのお茶が配布されており,候補者の多くは,雑誌を読んだり飲み p4 物を飲んだりして過ごしている。また,携帯電話で勤務先の会社に 連絡を取っている人もいる。 (委 員 長)最高裁判所から前年11月に送付される封書と,さいたま地裁 から選任手続期日の6週間前に送付する封書の内容について,率直 な御意見を伺いたい。 (委 員)さいたま地裁から送付される封書は,書類が多すぎて読めないと いうのが実感である。候補者に読んでもらいたい内容を,もっとコ ンパクトにしてはどうか。 (委 員)辞退事由のある場合には裁判所にお越しいただかなくても済むよ うにしたいと考えている。そのため,候補者に辞退事由の内容を分 かりやすく説明し,候補者に内容を理解してもらった上で,できる だけ詳しい情報を記入して欲しいことから,読む内容や書く内容が 多くなっている。 (委 員)読むべき書類がたくさん入っており,一生懸命書類を読んで勉強 したにもかかわらず,あっという間に抽選に外れて終わるというの では,候補者も納得できないところがあるのではないか。例えば, 送付する書類は選任手続のために必要なものだけにして,その余の 情報は,候補者本人が裁判所のホームページ等で調べるという方法 も考えられるのではないか。 (委 員)書類の記載を見ると分かりやすくしようという配慮が伺える。他 方で,書類の中には,例えば,「選任予定裁判員」,「選任裁判員」, 「候補者」等の用語が使われているが,用語の説明がないので,用 語の意味が分からないところがある。「選任予定裁判員」とはどの ような意味か。 (委 員)法律上,複数の事件で裁判が係属している被告人には,事件ごと に別の裁判員が選任される場合があり,「選任予定裁判員」は,そ のような場面で出てくる言葉である。しかし,実際に選任予定裁判 員を選任することはほとんどないので,書類の中でその用語を記載 する必要はないかもしれない。 (委 員)内容について分からないところを質問するコールセンターは,さ p5 いたま地裁にあるのか。電話が込み合っているという事態は生じて いないか。 (オブザーバー)さいたま地裁では,裁判員係あての専用回線が用意されて いる。裁判所の代表電話に掛けて,裁判員係につなぐという方法も ある。問合せの電話は頻繁にあるが,これまで,専用回線が埋まっ ているというような事態は生じていない。 (委 員)候補者から同じような質問はあるか。特に多い質問はどのような ものか。 (オブザーバー)最高裁判所からの封書が届く時期(11月)には,いわゆ る「オレオレ詐欺」の封書ではないかとの確認や問合せが多くなる 傾向にある。 (委 員)さいたま地裁からの封書に同封されている質問票について,辞退 事由として,介護等はそれほど詳細な記載が求められていないのに 対し,「仕事の都合」という事由は,「非常に重要な用務で」とい う文言になっており,より厳しい基準であるとの印象がある。どの ような場合に「仕事の都合」を理由とした辞退が認められるのかに ついて,がもう少し具体的に分かりやすく記載してはどうか。70 歳以上が辞退事由となっている点も少し違和感がある。  候補者が,仕事の都合で自分の他に代替する者がいないといった 理由を裁判官に述べた場合,本人が口頭で言うだけでは本当かどう か分からないのではないか。 (委 員)候補者が本当のことを言わなかったときは,法律上,過料の制裁 を受ける可能性があることから,手続は,候補者が本当のことを言 っているとの前提で進めている。 (委 員 長)70歳以上が辞退事由というのも,辞退ができるというもので あり,もちろん辞退しないで裁判員として参加いただくことは可能 である。 (委 員)裁判員候補者の出頭率の低下と辞退率の増加について,御意見を 伺いたい。 p6 (委 員)企業には,有給休暇のほかに特別な取組や制度はあるのか。 (委 員) 企業には,特別休暇を取得できるような配慮をお願いしている。 (委 員 長)裁判員制度が始まった当初,全国各地の裁判官が企業を回り, 配慮についてお願いしていた。仮に法律で制度化することとした場 合には影響が大きい。 (委 員)裁判員裁判の日程について,例えば3日間の審理日程だった場合, 3日連続の場合と月,水,金という日程の場合とでは,どちらが参 加しやすいか。 (委 員)例えば,1週間の審理の場合に1日も欠席できないというのは厳 しいものがある。それが1か月となると,更に厳しいものとなる。 審理予定のうち,何日かは欠席を認めるという取扱いはできないの か。 (委 員)被害者等の多くの証人から話を聞く場合等には,1か月くらいの 審理になることもあるが,裁判員は,そのすべてに参加する必要が ある。例えば,体調不良等により,どうしても審理に参加できない という場合には,選任されている補充裁判員が代わりに裁判員とし て裁判員裁判に参加することになる。 (委 員)補充裁判員というのは,裁判員の体調不良等,どうしても参加で きない場合に1日だけ代わって参加するというものか。やむを得ず 欠席した裁判員は,復帰した後から参加すれば良いのか。 (委 員)手続上は,裁判員になると欠席ができず,1日でも欠席すれば, その裁判員を解任して,補充裁判員が裁判員に代わって参加するこ ととなる。補充裁判員は,6名の裁判員と同様に審理の最初から裁 判員と同じように審理に参加している。法廷内で見聞きしている情 報は,裁判員と全く同じであり,裁判員に代わって審理に参加して も問題は生じない。 第6 次回のテーマについて    次回のテーマについて意見交換を行った結果,「DV事件」をテーマとして 取り上げることとした。    第7 次回期日    平成29年5月18日(木)午後3時