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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成16(行ウ)44等

事件名

 工事中止命令無効確認請求事件

裁判年月日

 平成17年5月26日

裁判所名

 名古屋地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 旅館業法2条2項及び3項に規定するホテル及び旅館を対象として,その建物の構造等について所定の基準を設け,その基準に適合しない場合には,町長は当該ホテル等の建築に同意せず,かかる同意なくしてホテル等を建築し,又は建築しようとする者に対しては,当該ホテル等の建築の中止等を命ずることができる旨定める「東郷町ホテル等建築の適正化に関する条例」(平成6年東郷町条例第19号)と憲法22条 2 旅館業法2条2項及び3項に規定するホテル及び旅館を対象として,その建物の構造等について所定の基準を設け,その基準に適合しない場合には,町長は当該ホテル等の建築に同意せず,かかる同意なくしてホテル等を建築し,又は建築しようとする者に対しては,当該ホテル等の建築の中止等を命ずることができる旨定める「東郷町ホテル等建築の適正化に関する条例」(平成6年東郷町条例第19号)の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」との適合性 3 旅館業法2条2項及び3項に規定するホテル及び旅館を対象として,その建物の構造等について所定の基準を設け,その基準に適合しない場合には,町長は当該ホテル等の建築に同意せず,かかる同意なくしてホテル等を建築し,又は建築しようとする者に対しては,当該ホテル等の建築の中止等を命ずることができる旨定める「東郷町ホテル等建築の適正化に関する条例」(平成6年東郷町条例第19号)に基づき,ホテルの建築に着手した者に対し,町長がした建築中止命令の無効確認請求が,棄却された事例

裁判要旨

 1 旅館業法2条2項及び3項に規定するホテル及び旅館を対象として,その建物の構造等について所定の基準を設け,その基準に適合しない場合には,町長は当該ホテル等の建築に同意せず,かかる同意なくしてホテル等を建築し,又は建築しようとする者に対しては,当該ホテル等の建築の中止等を命ずることができる旨定める「東郷町ホテル等建築の適正化に関する条例」(平成6年東郷町条例第19号)につき,ホテルの経営における憲法22条の「公共の福祉」による制約は,社会国家的見地からする積極的,政策的なものであっても,その規制の程度が,その目的を達するために合理的な関連性を有する範囲内である限り,許容されると解され,ラブホテル経営については,利用客の出入り自体が周辺の生活環境,教育環境に悪影響を与え得るものと考えられる上,性犯罪等の発生の可能性も無視できないなど,公共の福祉の観点からする規制の必要性が高いことは否定できないところ,同町においては,都会化された地域と比較してラブホテルの存在による生活環境,教育環境の悪影響は相当なものであると推認され,同条例を定めたことには相応の合理性があり,同条例の定める構造基準を満たすホテル等をラブホテル等として使用することや,既存の建物をラブホテル等として利用することも禁ずるものではないことを考慮すると,規制の手法,内容が比例原則に反するとはいえないから,憲法22条に違反するとはいえない。 2 旅館業法2条2項及び3項に規定するホテル及び旅館を対象として,その建物の構造等について所定の基準を設け,その基準に適合しない場合には,町長は当該ホテル等の建築に同意せず,かかる同意なくしてホテル等を建築し,又は建築しようとする者に対しては,当該ホテル等の建築の中止等を命ずることができる旨定める「東郷町ホテル等建築の適正化に関する条例」(平成6年東郷町条例第19号)の「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」との適合性につき,同法と同条例の目的は,その趣旨においてほぼ重なり,規制対象もいずれも実質的にはラブホテルを規制対象としていると解することができるが,規制の手法については,同法が,罰則や営業停止等の専ら事後的な規制手法であるのに対し,同条例は,施設の建築という営業前の段階における規制であるところ,同法の立法態度については,従来の規定では規制の及ばなかった新たな形態の性風俗営業が出現した場合には,これを規定の対象に取り込む必要があると考えていることが明らかであり,法律改正が完了するまでの間,何らの規制を加えるべきではないというのが同法の趣旨であるとはいえないことからすれば,同法の規制が最大限であって,条例による上乗せ規制,横出し規制を一切許さない趣旨であるとまではいえないとして,同条例が,同法の規制の対象外となっている性的好奇心を高める設備等を有しないラブホテル等をも規制の対象としているからといって,同法の趣旨に反するとまではいえない。 3 旅館業法2条2項及び3項に規定するホテル及び旅館を対象として,その建物の構造等について所定の基準を設け,その基準に適合しない場合には,町長は当該ホテル等の建築に同意せず,かかる同意なくしてホテル等を建築し,又は建築しようとする者に対しては,当該ホテル等の建築の中止等を命ずることができる旨定める「東郷町ホテル等建築の適正化に関する条例」(平成6年東郷町条例第19号)に基づき,ホテルの建築に着手した者に対し,町長がした建築中止命令の無効確認請求につき,同命令の前提となる同条例は,憲法22条及び「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」に矛盾抵触せず,旅館業法についても,平成8年法律第91号による改正によりその目的から善良な風俗の確保という観点が後退しており,同法に定める以上の規制を禁止する趣旨と解することはできないから,同条例は同法にも矛盾抵触せず,また,同条例の規制内容が不明確であるともいえないから無効なものであるとはいえないとして,前記請求を棄却した事例

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