裁判例結果詳細
行政事件 裁判例集
- 事件番号
昭和60(行ウ)7
- 事件名
原子炉設置許可処分無効確認等請求事件
- 裁判年月日
平成12年3月22日
- 裁判所名
福井地方裁判所
- 分野
行政
- 判示事項
1 高速増殖炉の建設及び運転の差止請求の根拠 2 建設中の原子炉施設の周辺に居住する住民がした同施設の建設及び運転の差止請求が,棄却された事例
- 裁判要旨
1 個人の生命,身体が極めて重大な保護法益であることはいうまでもなく,個人の生命,身体の安全を内容とする人格権は,物権の場合と同様に排他性を有する権利というべきであり,生命,身体を違法に侵害され,又は侵害されるおそれのある者は,人格権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来生じる侵害を予防するため,侵害行為の差止めを求めることができると解するのが相当であるのに対し,環境権については,そのような権利が認められていると解すべき実体法上の根拠はなく,また,環境は国民一般が共通に享受する性格のものであるから,そのようなものについて個々人が排他的に支配しうるような私法上の権利を有していると認めることには疑問がある上,その権利の内容及びこれが認められるための要件も明らかとはいえないから,環境権が実体法上独立の権利として差止請求の根拠となると解することは困難である。 2 建設中の原子炉施設の周辺に居住する住民がした同施設の建設及び運転の差止請求につき,同施設の平常運転時に環境に放出される放射性物質による同人らへの生命,身体への影響は無視し得るほど小さいというべきであるから,前記施設が建設,運転されると,その平常運転時において同人らの生命,身体が侵害される具体的な危険があるとは認められず,また,前記施設の設計における立地条件,事故防止及び公衆との離隔に係る各安全確保対策並びに前記施設の運転段階における安全確保対策は,いずれも前記施設の安全性を確保し得るものということができるから,前記施設が建設,運転されると,大量の放射性物質が環境に放出されるような事故が発生し,同人らの生命,身体が侵害される具体的な危険があるとは認められないとして,前記請求を棄却した事例
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