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最高裁判所判例集

事件番号

 平成17(受)384

事件名

 割増手当請求事件

裁判年月日

 平成19年10月19日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄差戻

判例集等巻・号・頁

 民集 第61巻7号2555頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成15(ネ)3360

原審裁判年月日

 平成16年11月24日

判示事項

 1 マンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,上記一定の時間が,管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例
2 マンションの住み込み管理員である夫婦が雇用契約上の休日である土曜日も管理員としての業務に従事していた場合において,土曜日については,夫婦のうち1人のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当であるとされた事例
3 マンションの住み込み管理員が土曜日を除く雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において,使用者が明示又は黙示に上記休日に行うことを指示したと認められる業務に現実に従事した時間のみが労働基準法上の労働時間に当たるとされた事例

裁判要旨

 1 マンションの住み込み管理員が所定労働時間の開始前及び終了後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において,(1)使用者は,上記一定の時間内の各所定の時刻に管理員室の照明の点消灯,ごみ置場の扉の開閉,冷暖房装置の運転の開始及び停止等の業務を行うよう指示していたこと,(2)使用者が作成したマニュアルには,管理員は所定労働時間外においても,住民等から宅配物の受渡し等の要望が出される都度,これに随時対応すべき旨が記載されていたこと,(3)使用者は,管理員から定期的に業務の報告を受け,管理員が所定労働時間外においても上記要望に対応していた事実を認識していたことなど判示の事実関係の下では,上記一定の時間は,管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて,その間,管理員が使用者の指揮命令下に置かれていたものであり,労働基準法32条の労働時間に当たる。
2 マンションの住み込み管理員である夫婦が雇用契約上の休日である土曜日も使用者の指示により平日と同様の業務に従事していた場合において,使用者は,土曜日は1人体制で執務するよう明確に指示し,同人らもこれを承認していたこと,土曜日の業務量が1人では処理できないようなものであったともいえないことなど判示の事情の下では,土曜日については,同人らのうち1人のみが業務に従事したものとして労働時間を算定するのが相当である。
3 マンションの住み込み管理員が土曜日を除く雇用契約上の休日に断続的な業務に従事していた場合において,使用者が,管理員に対して,管理員室の照明の点消灯及びごみ置場の扉の開閉以外には上記休日に業務を行うべきことを明示に指示していなかったなど判示の事実関係の下では,使用者が上記休日に行うことを明示又は黙示に指示したと認められる業務に現実に従事した時間のみが労働基準法32条の労働時間に当たる。

参照法条

 (1〜3につき)労働基準法32条

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