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最高裁判所判例集

事件番号

 平成20(受)1340

事件名

 建物収去土地明渡請求事件

裁判年月日

 平成21年11月27日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄自判

判例集等巻・号・頁

 集民 第232号409頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成20(ネ)589

原審裁判年月日

 平成20年5月14日

判示事項

 1 賃借人が,借地上の建物の建て替えに当たり賃貸人から得た承諾とは異なる持分割合で新築建物を他の者らの共有とすることを容認して借地を無断転貸したことにつき,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとされた事例
2 賃借人が,借地上の建物の共有者がその持分を他の者に譲渡することを容認して借地を無断転貸したことにつき,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるとされた事例

裁判要旨

 1 賃借人が,借地上の建物を建て替えるに当たり,賃貸人から得た承諾とは異なる持分割合で新築建物を他の者らの共有とすることを容認し,これに伴い共有者の1人において上記承諾を超える持分を取得した限度で借地を無断転貸したとしても,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるというべきである。
  (1) 新築建物の共有者は,賃借人の妻及び子であって,建て替えの前後を通じて借地上の建物において賃借人と同居しており,上記転貸により借地の利用状況に変化は生じていない。
  (2) 賃貸人は,賃借人の持分を10分の1,子の持分を10分の7,妻の持分を10分の2として建物を建て替えることを承諾しており,上記転貸については,賃借人の持分とされるはずであった10分の1の持分が妻の持分とされたことに伴う限度で賃貸人の承諾がなかったにとどまる。
  (3) 賃貸人は,賃借人が新築建物の持分を取得することにつき重大な関心を有していなかった。
2 賃借人が,借地上の建物の共有者がその持分を他の者に譲渡することを容認し,これに伴い借地を無断転貸したとしても,次の(1)〜(3)の事情の下においては,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるというべきである。
  (1) 上記の持分譲渡は,賃借人の子からその妻に対し,離婚に伴う財産分与として行われたものである。
  (2) 賃借人の子の妻は,離婚前から借地上の建物において賃借人と同居しており,賃借人の子が上記建物から退去したほかは,上記転貸により借地の利用状況に変化は生じていない。
  (3) 賃貸人は,上記転貸により不利益を全く被っていない。

参照法条

 民法612条2項

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