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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和25(れ)98

事件名

 暴力行為等処罰に関する法律違反・業務妨害、建造物侵入、窃盗

裁判年月日

 昭和26年7月18日

法廷名

 最高裁判所大法廷

裁判種別

 判決

結果

 その他

判例集等巻・号・頁

 刑集 第5巻8号1491頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和24年10月31日

判示事項

 一 公務員に対する威力の誇示と業務妨害罪の成否
二 生産管理の違法性
三 社会と組合との間に争議について妥協成立し双方の合意によつて全員解雇され組合が解散した場合と争議の終了
四 右の場合会社となお抗争を継続する組合の少数反対派の行動は争議行為といえるか
五 検挙に向つた警察官等に対しスクラムを組み労働歌を高唱する労働者等の行為と公務執行妨害の成否
六 暴力行為を等処罰に関する法律第一条第一項の合憲性

裁判要旨

 一 論旨は更に進んで、以上の如き被告人等の行為(スクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げた行為)が暴力でないとすれば威力であるから、公務員執行妨害罪が成立しないとしても業務妨害罪が成立すると主張するのであるか、業務妨害罪にいわゆる業務の中には、公務員の職務は含まれないものと解するを相当とするから、公務員の公務執行に対し、かりに暴行又は脅迫に達しない程度の威力を用いたからといつて業務妨害罪が成立すると解することはできない。
二 会社の従業員等(労働組合員)が、会社との争議中、会社側の意向を全然無視し、強いて会社の建造物に立ち入つてこれを占拠し、他の従業員に就業を阻止し、あるいは会社所有の物品をほしいままに管理処分するが如き一連の行為をした場合にはかりに、原判決認定のごとき会社側に非難に値する仕打があり、従業員側にむしろ同情すべき事情があつたとしても、かかる行為を緊急止むを得ない争議行為として適法視することはできない。
三 争議中、会社と組合との間に妥協成立し、双方の合意によつて会社の従業員たる組合員全員が適法に解雇され、組合も解散したときはこれにより争議は終了する。
四 右の場合、組合の少数反対派の者が会社と飽く迄も抗争せんとして行動しても、それは争議行為とはいえない。
五 会社業務の妨害の現行犯として検挙に向つた警察官等に対し、労働者等がスクラムを組み労働歌を高唱して気勢を挙げたとしてもそれだけでは必ずしも公務執行妨害罪は成立しない。
六 暴力行為等処罰に関する法律第一条第一項の規定は、憲法第二八条、第九八条に違反しない。

参照法条

 刑法234条,刑法95条1項,旧刑訴法1条,憲法28条,憲法98条,暴力行為処罰に関する法律1条1項

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