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最高裁判所判例集

事件番号

 平成3(オ)1534

事件名

 国家賠償

裁判年月日

 平成8年7月12日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第50巻7号1477頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 昭和60(ネ)3303

原審裁判年月日

 平成3年4月26日

判示事項

 一 普通河川からのいっ水によって生じた水害につき河川管理の瑕疵がないとされた事例
二 設置済みの河川管理施設の瑕疵の有無の判断基準

裁判要旨

 一 昭和四九年に普通河川からのいっ水による水害が生じたが、右河川を管理する市においては、水害防止のための抜本的対策としては雨水排除を目的の一つとする公共下水道整備計画につき建設大臣の認可を受けた上これを実行中であり、また、当面の対策としては昭和四二年以降毎年しゅんせつ工事などを行ってきたものであるところ、右河川は、雨水排除のための自然的条件に恵まれておらず、昭和四〇年代の急激な宅地開発により流域の土地の保水機能が減退し、いっ水による水害発生の可能性が増大したもので、河川の管理における諸制約を考慮すると市が安全性を速やかに確保することは困難であり、過去に発生した水害被害は住民の生命に危険を及ぼしたり大規模な財産的損害を発生させたりするほどのものではなく、当時の我が国においては流域の宅地化によりかんがい用水路から市街地の排水路に変容した右河川のような普通河川については改修計画の策定も本格的な改修工事の実施もされていないのが通常であり、右公共下水道整備計画の策定時期、内容、実施状況に不合理な点はないなど判示の事実関係の下においては、右河川の管理について瑕疵があったということはできない。
二 水害発生の時点において既に設置済みの河川管理施設がその予定する安全性を有していなかったという瑕疵があるか否かは、右施設設置の時点における技術水準に照らして、右施設が、その予定する規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性を備えているかどうかによって判断すべきである。

参照法条

 国家賠償法2条1項

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