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最高裁判所判例集

事件番号

 平成3(オ)168

事件名

 損害賠償

裁判年月日

 平成7年4月25日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 民集 第49巻4号1163頁

原審裁判所名

 名古屋高等裁判所

原審事件番号

 平成1(ネ)342

原審裁判年月日

 平成2年10月31日

判示事項

 一 胆のうがんの疑いがあると診断した医師が患者にその旨を説明しなかったことが診療契約上の債務不履行に当たらないとされた事例
二 胆のうがんの疑いがあると診断した医師が患者の夫にその旨を説明しなかったことが診療契約上の債務不履行に当たらないとされた事例

裁判要旨

 一 医師が、患者に胆のうの進行がんの疑いがあり入院の上精密な検査を要すると診断したのに、患者に与える精神的打撃と治療への悪影響を考慮して手術の必要な重度の胆石症であると説明し、入院の同意を得ていた場合に、患者が初診でその性格等も不明であり、当時医師の間ではがんについては患者に対し真実と異なる病名を告げるのが一般的であって、患者が医師に相談せずに入院を中止して来院しなくなったなど判示の事実関係の下においては、医師が患者に対して胆のうがんの疑いがあると説明しなかったことを診療契約上の債務不履行に当たるということはできない。
二 医師が、患者に胆のうの進行がんの疑いがあると診断したのに、患者に対しては手術の必要な重度の胆石症であると説明して入院の同意を得ていた場合に、患者が初診でその家族関係や治療に対する家族の協力の見込みが不明であるので、入院後に患者の家族の中から適当な者を選んで検査結果等を説明する予定でいたところ、患者が医師に相談せずに入院を中止したため家族に対する説明の機会を失ったなど判示の事実関係の下においては、医師が患者の夫に対して胆のうがんの疑いがあると説明しなかったことを診療契約上の債務不履行に当たるということはできない。

参照法条

 民法415条,民法709条

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