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最高裁判所判例集

事件番号

 昭和25(あ)694

事件名

 業務上横領、横領

裁判年月日

 昭和26年1月23日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集刑 第39号573頁

原審裁判所名

 広島高等裁判所  松江支部

原審事件番号

原審裁判年月日

 昭和25年1月9日

判示事項

 銀行の出納係主任が他人と共謀して業務上保管にかかる金品を擅に他人の営業資金に流用費消した行為の擬律と判例違反の主張の適否

裁判要旨

 論旨は被告人Aは自己の名義ではなく、判示銀行の名義で判示金員を貸付けたのであるから背任罪を以て問擬すべきであるに拘わらず横領罪として処罰した原判決は大審院判例(昭和十年(れ)第五〇二号同年七月三日刑事第三部判決)に反すると主張する。記録に懲するに第一審判決並に第二審判決は何れも被告人Aが銀行名義を以て判示金員を貸付けた事実は認定していない。ただ原判決は銀行の出納係主任が他人と共謀して業務上保管にかかる金員をほしいまゝに他人の営業資金に流用して費消したときは自己の物として不法に領得する意思を実現したものであるからたとえ右の流用が銀行名義を以てする貸付の形式をとつても出納係主任に金員貸付の権限が全くない以上右の行為は業務上横領罪を構成し背任罪に問擬すべきものでないと判示したことは所論の通りである。按ずるに他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物について権限を有しないに拘わらず所有者でなければできないような処分をする意思を以て自己の保管にかかる物を処分すれば横領罪は成立することは当裁判所判例の示すところである。(昭和二三年(れ)第一四一二号同二四年三月八日第三小法廷判決)そのして原判決は右当裁判所判例と同一趣旨であることは判文上明白であるから論旨は理由がない。

参照法条

 刑法247条,刑法252条1項,刑訴法405条3号

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