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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成20(行コ)181

事件名

 損害賠償請求及び不当利得金返還請求控訴事件(住民訴訟)(原審・大阪地方裁判所平成17年(行ウ)第3号[甲事件],同年(行ウ)第29号[乙事件],同年(行ウ)第95号[丙事件],同年(行ウ)第157号[丁事件])

裁判年月日

 平成22年9月17日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)並びに退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める訴えにおいて,当該相手方がその氏名等で特定表示されていない場合でも,これを氏名等以外の方法で客観的に特定することができるときは,当該訴えは適法であるとした事例
2 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)及び退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該職員に損害賠償請求をすること及び当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める各請求が,いずれも棄却された事例

裁判要旨

 1 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)並びに退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める訴えにつき,同号に基づく請求においては,通常,当該職員又は相手方をその氏名及び住所を表示することにより特定することを要すると解されるが,普通地方公共団体の住民においていわゆる情報公開条例に基づく情報公開請求を行うことなども含めて相当の注意力をもって調査を尽くしても前記当該職員又は相手方をその氏名等により特定できない場合にまで常に前記当該職員又は相手方をその氏名等で特定表示することを要するものと解すると,当該職員又は相手方に対する損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める訴訟を提起するみちが封じられる場面も生じ得ることとなり妥当とはいい難いことなどから,当該職員又は相手方がその氏名等で特定表示されていない場合であっても,これを氏名等以外の方法で客観的に特定することができるときは,当該訴えは請求の特定に欠けるところがないと解するのが相当であるとした上,訴状には相手方が一般職非常勤職員22名であること及びこれらの者に対する特別報酬の支給総額が記載されており,当該年度に特別報酬を受けた一般職非常勤職員は22名のみで,特別報酬の支給総額についても当事者間で争いがないことから,訴状の記載に基づいて請求の相手方を客観的に特定できるとして,前記訴えを適法とした事例
2 市の市長部局及び教育委員会所属の非常勤職員らに対する,6月期,12月期の特別報酬(いわゆるボーナス)及び退職時の特別報酬(いわゆる退職手当)の各支給が違法であるとして,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,当該職員に損害賠償請求をすること及び当該行為に係る相手方に不当利得返還請求をすることを市長に対して求める各請求につき,地方公共団体に勤務する一般職の職員が地方自治法204条1項の「常勤の職員」に当たるか否かについては,任用を受ける際に合意した勤務条件,実際に従事した職種及び勤務内容,実働の勤務時間等の勤務実態に関する具体的事情を検討した上で,それぞれの職員が生計の資本としての収入を得ることを主たる目的として当該職務に従事してきたものであるか否かによって判断するのが相当であり,それぞれの職員がどのような呼称によって任用を受けたかという形式的な理由によって区別されるものではないとした上,前記非常勤職員らは,その勤務実態が常勤職員と大きく異なることはなく,常勤職員と同様に生計の資本としての収入を得ることを主な目的としてそれぞれの職務に従事してきたものと推認されるから,同条所定の常勤の職員に該当すると解するのが相当であるとした上,前記特別報酬は,枚方市職員給与条例(昭和23年枚方市条例第103号。平成17年枚方市条例第18号による改正前)において定められた給与の額及び支給方法についての基本的事項に基づき,その範囲内で同条例により委任を受けて市長が制定した細則的事項によって決定されるものであり,地方自治法204条3項,204条の2,地方公務員法25条1項等に定める給与条例主義の趣旨である地方公務員の給与に対する民主的統制の要請に反するものではないから,給与条例主義に反するものではなく,その支給が違法ないし無効とは認められないとして,前記各請求をいずれも棄却した事例

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