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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行コ)55

事件名

 基本水量決定処分取消,不当利得返還請求控訴事件(原審・京都地方裁判所平成20年(行ウ)第22号〔第1事件〕,同年(行ウ)第29号〔第2事件〕)

裁判年月日

 平成22年9月30日

裁判所名

 大阪高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 水道用水供給事業者の長である府知事が,京都府営水道の供給料金等に関する条例(昭和62年京都府条例第9号)に基づき,水道事業者である町に対してした1日当たりの最大の受水量(基本水量)決定が,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとされた事例

裁判要旨

 水道用水供給事業者の長である府知事が,京都府営水道の供給料金等に関する条例(昭和62年京都府条例第9号)に基づき,水道事業者である町に対してした1日当たりの最大の受水量(基本水量)決定につき,京都府営水道用水供給事業は,水道により水道事業者に対して水道用水の卸売りを行う事業であるから,水道用水供給事業者と水道事業者との関係は,基本的には,水の供給契約における売主と買主の関係に相当し,行政組織上,一般的な上級行政庁とその指揮監督に服する下級行政庁という関係とはいえないものの,水道用水供給事業者と水道事業者との供給契約は,契約上の給付が国民の福祉,公共の利益に密接な関係を有することから,自由競争の原理が妥当する私人間の契約と同視することができず,むしろ,公共事業の利用に関する行政契約として,法律や条例により一部を行政処分の形式を採って規律することが可能なものと解されるとした上,同条例2条2項の文言上,協議において受水市町と府知事との合意ができないときは,府知事が,協議を踏まえて,一方的に基本水量を決定することができる構造になっているところ,基本水量については申込みをした当該市町の利害のみならず,他の受水市町との均衡を含めた総合的調整も考慮して決せられなければならないことからすると,同項は,かかる総合的調整のために基本水量の決定を府知事の裁量に委ね,当該市町との協議という手続を経た上で,府知事が行政処分として,その裁量により一方的に基本水量を決定する権限を付与したものと解するのが相当であって,基本水量の決定は,公権力の主体たる地方公共団体である府が行う行為のうち,その行為によって,行政契約たる水道用水供給契約の相手方として,府との関係では「国民」と同一の地位に立つ受水市町の権利義務を直接形成することが条例により認められているものと解すべきであり,同決定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとした事例

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