裁判例検索

裁判例結果詳細

行政事件 裁判例集

事件番号

 平成18(行ウ)223等

事件名

 事業認定取消請求事件(第1事件),事業認定取消請求事件(第2事件),裁決取消請求事件(第3事件)

裁判年月日

 平成22年9月1日

裁判所名

 東京地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定が,同法20条3号の要件に適合しているとされた事例
2 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定が,同法20条4号の要件に適合しているとされた事例

裁判要旨

 1 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定につき,同法20条3号の要件については,当該土地が当該事業の用に供されることによって得られるべき公共の利益と,これによって失われる私的な利益及び公共の利益を比較衡量した結果として,前者が後者を優越する場合に,当該事業は同要件に該当するものと解するのが相当であるが,事業の認定をする行政庁は,その判断に係る裁量権を有し,その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は事実に対する評価が明らかに合理性を欠くことや判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法となると解するのが相当であるとした上,前記起業地が前記事業の用に供されることによって得られる公共の利益は,道路交通における広域的な利便性の向上,首都圏全体の交通の円滑化及び地域の幹線道路の交通混雑の緩和であり,相応の公共の利益が存するといえること,他方,失われる利益については,高尾山の地下水やその景観に影響が生ずるおそれがあることは否定できないが,東京都環境影響評価条例(昭和55年東京都条例第96号)に基づく環境影響評価等において,適切な措置を講ずることによってその影響は少ないと評価されていること,大気汚染,騒音,振動及び低周波空気振動にも影響が生じるおそれがあることは否定できないが,大気汚染及び騒音については前記環境影響評価等の環境基準に適合し,振動及び低周波空気振動についても前記環境影響評価等においてその影響は小さいとされていること等を勘案すれば,前記事業の施行によって得られる公共の利益がこれによって失われる利益に優越するとの国土交通大臣の判断が重要な事実の基礎を欠くか又はその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くと認めるに足らず,前記事業が同号の要件に該当するとした同大臣の判断につき,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法があるということはできないとして,前記事業は同号の要件に適合しているとした事例
2 一般有料自動車専用道路及びジャンクションの新設工事等の事業に係る起業地について国土交通大臣がした土地収用法16条所定の事業の認定につき,同法20条4号は,当該事業において収用又は使用という取得手続を執ることの必要性があり,かつ,それが公益目的に合致することを求めるものと解され,このような同号の要件適合性の判断は,その性質上,政策的な判断を伴うものであり,事業の認定をする行政庁はその判断に係る裁量権を有し,その判断の基礎とされた事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くことになる場合,又は,事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,判断の過程において考慮すべき事情を考慮していないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして違法となるとした上,前記事業の認定の申請は,任意の用地取得が困難である場合に一体性を有する前記事業の計画的な遂行を図るためにされたものであり,前記事業につき収用又は使用という取得手続を執ることの必要性が認められること,前記事業の目的が道路交通における広域的な利便性の向上,首都圏全体の交通の円滑化及び地域の幹線道路の交通混雑の緩和にあること,首都圏中央連絡道路建設促進協議会等から前記事業について早期建設等が要望されていること,社会資本整備重点計画等においても前記事業に係る道路の整備の促進が重要な政策課題として掲げられていること等を勘案すれば,国土交通大臣による前記事業について必要に応じ収用又は使用という取得手続を執ることが公益目的に合致するとの判断が,重要な事実の基礎を欠くか又はその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとはいえず,前記事業が同号の要件に該当するとした同大臣の判断につき,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法があるということはできないとして,前記事業は同号の要件に適合しているとした事例

全文