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最高裁判所判例集

事件番号

 平成22(行ヒ)175

事件名

 賃借料返還等請求住民訴訟事件

裁判年月日

 平成23年12月2日

法廷名

 最高裁判所第二小法廷

裁判種別

 判決

結果

 破棄自判

判例集等巻・号・頁

 集民 第238号237頁

原審裁判所名

 名古屋高等裁判所

原審事件番号

 平成21(行コ)18

原審裁判年月日

 平成22年1月21日

判示事項

 市が賃借人として締結した土地賃貸借契約がその締結の経緯及び内容に照らして賃貸人に有利なものである場合であっても,当該契約に基づく市長による賃料の支出が違法ではないとされた事例

裁判要旨

 市が賃借人として締結した土地賃貸借契約が,従前は市が所有し,賃貸人の要求に応じて賃貸人に譲渡した土地を対象とするものであり,また,賃借人の側から更新をすることができず,賃料の減額も制限されるなど,賃貸人に有利なものである場合であっても,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,当該契約に基づく市長による賃料の支出は,違法ではない。
 (1) 上記土地は,市内のため池の一部を埋め立てて工場用地とすること等を内容とする開発事業の区域内にあった賃貸人の所有地の代替地として要求されたものであり,その要求に応じなければ,市に相当程度の税収入の増加と雇用の創出をもたらす上記開発事業を実施することができない状況にあった。
 (2) 上記土地は,上記ため池の残部を含み,上記開発事業に係る土地利用計画に残存緑地として組み込まれており,その現状を維持し保全するために当該契約を締結することは,上記開発事業の円滑な継続のために必要であり,上記土地上に存在する特徴ある陸生植物種が植生する湿地環境の保全にも資するものである。
 (3) 市が当該契約の締結に際して上記のような内容の約定に応じたのは,賃借人の側からの更新の約定を設けることに応じない賃貸人が自ら契約を更新する動機付けとなるに足りる金額の賃料を支払うことによって事実上その永続的な更新を確保する趣旨によるものであり,その賃料が特に高額であるともいえない。

参照法条

 地方自治法1条の2第1項,地方自治法2条14項,地方自治法242条の2第1項1号,地方自治法242条の2第1項4号,地方財政法4条1項

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