裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
平成23(行ツ)122
- 事件名
財産管理を怠る事実の違法確認請求事件
- 裁判年月日
平成24年2月16日
- 法廷名
最高裁判所第一小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
民集 第66巻2号673頁
- 原審裁判所名
札幌高等裁判所
- 原審事件番号
平成22(行コ)4
- 原審裁判年月日
平成22年12月6日
- 判示事項
市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為の違憲性を解消するための手段として,氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて市が上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に適正な賃料で賃貸することが,憲法89条,20条1項後段に違反しないとされた事例
- 裁判要旨
市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法89条,20条1項後段に違反する場合において,市が,上記神社施設の撤去及び上記市有地の明渡しの請求の方法を採らずに,氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に適正な賃料で賃貸することは,上記氏子集団が当該賃貸部分において上記神社施設の一部を維持し,年に数回程度の祭事等を今後も継続して行うことになるとしても,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記の違憲性を解消するための手段として合理的かつ現実的であって,憲法89条,20条1項後段に違反しない。
(1)ア 上記賃貸がされると,上記氏子集団が利用する市有地の部分が大幅に縮小され,当該賃貸部分の範囲を外見的にも明確にする措置により利用の範囲が事実上拡大することも防止される上,上記神社施設の一部の移設や撤去等の措置により上記市有地の他の部分からは上記神社施設に関連する物件や表示は除去されることとなる。
イ 上記氏子集団が上記アの移設や撤去等の後に国道に面している当該賃貸部分において祭事等を行う場合に,上記市有地の他の部分を使用する必要はない。
ウ 上記神社施設の前身は上記市有地が公有となる前からその上に存在しており,上記市有地が公有となったのも,小学校敷地の拡張に協力した用地提供者に報いるという目的によるものであった。
(2) 上記神社施設が全て直ちに撤去されると,上記氏子集団がこれを利用してごく平穏な態様で行ってきた祭事等の継続が著しく困難になるのに対し,上記賃貸がされると,上記氏子集団は当該賃貸部分において従前と同様の祭事等を行うことが可能となる。
(3) 上記賃貸の実施は市議会の議決を要するものではなく,上記賃貸の方針は上記氏子集団や連合町内会の意見聴取を経てその了解を得た上で策定されたものであり,賃料の額も年3万円余であって,その支払が将来滞る蓋然性があるとは考え難い。
- 参照法条
憲法20条1項,憲法89条
- 全文