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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成22(行コ)37

事件名

 政務調査費交付金残余金返還命令決定処分取消請求・政務調査費支払請求各控訴事件(原審・福岡地方裁判所平成21年(行ウ)第24号等)

裁判年月日

 平成23年9月8日

裁判所名

 福岡高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 政務調査費の交付を受けた議員が返還すべき残余金の額の判断基準
2 市の議員に対する政務調査費残余金返還請求権を自働債権とし,同議員の市に対する政務調査費交付請求権を受働債権としてした相殺が,有効とされた事例

裁判要旨

 1 地方自治法(平成20年法律第69号による改正前)100条14項の規定する政務調査費の収支報告書の制度は,政務調査費の使途の適正と透明性を確保することを目的とするところ,前記規定を受けて,福岡市政務調査費の交付に関する条例(平成13年福岡市条例第2号)及び福岡市政務調査費取扱要領は,議員が交付を受けた政務調査費は,自己の財産とは別口座で管理し,支出の都度,政務調査費から支出することを明確にして,会計帳簿に記載することを要求していることからすれば,前記条例13条が,返還すべき残余金の額を算出するに当たり控除すべき額として規定する「交付対象議員がその年度において市政の調査研究に資するため必要な経費として支出した総額」とは,使途基準に適合した経費であって,収支報告書の支出欄に記載されたものの総額をいうと解される。
2 市の議員に対する政務調査費残余金返還請求権を自働債権とし,同議員の市に対する政務調査費交付請求権を受働債権としてする相殺につき,これを禁止する旨の法規上の規定はなく,また,政務調査費の制度は,議会の審議能力を強化し,議員の調査研究活動の基盤の充実を図るというその趣旨を損なうことなく運用されなければならないが,政務調査費の交付は,政務調査活動の費用の一部を交付するものにすぎず,前記相殺を認めても,直ちに議員の調査研究活動に支障を来すものとはいえない上,債権の性質,関連性,発生時期の接着性等にも照らすと,前記相殺は,前記議員に支給されるべき政務調査費の金額に関する調整的な意味合いを有するにとどまるから,政務調査費の制度の前記趣旨を損なうおそれがあるものとはいえないとして,前記相殺を有効とした事例

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