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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成19(行ウ)10

事件名

 産業廃棄物最終処分場等設置許可処分取消請求事件

裁判年月日

 平成24年4月24日

裁判所名

 福島地方裁判所

分野

 行政

判示事項

 1 県知事がした産業廃棄物処理施設設置許可処分の取消しの義務付けを求める訴えにつき,同施設の周辺に居住する住民らの原告適格が肯定された事例
2 産業廃棄物処理施設の周辺住民らが提起した,県知事による同施設の設置許可処分の取消しの義務付けを求める訴えが,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を満たすとされた事例
3 県知事がした産業廃棄物処理施設設置許可処分の取消しの義務付けを求める訴えが,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」の要件を満たすとされた事例
4 産業廃棄物処理施設の周辺住民らによる,県知事が廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条の3第1項1号に基づき同施設設置許可の取消しをすることの義務付け請求が,認容された事例

裁判要旨

 1 県知事がした産業廃棄物処理施設設置許可処分の取消しの義務付けを求める訴えにつき,廃棄物の処理及び清掃に関する法律は,産業廃棄物処理施設の周辺地域に居住する住民に対し,同施設に起因する人体に有害な大気の汚染,水質の汚濁,土壌の汚染等によって,その健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解され,その被害の内容,性質,程度等に照らせば,この具体的利益は,一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものであるから,このような被害を直接的に受けるおそれのある者は,同施設の設置許可の取消しの義務付けを求めるにつき法律上の利益を有するとした上で,住民らの住所地と前記施設との距離は,最も離れた者で約165メートルであること,一部の者は,生活用水として井戸水を使用し,又は農業用水として同施設に隣接するため池の水を使用していることからすれば,同施設から人体に有害な物質を含む排ガス等や浸出水が継続的に排出された場合には,まさにその健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるとして,同住民らの原告適格を肯定した事例
2 産業廃棄物処理施設の周辺住民らが提起した,県知事による同施設の設置許可処分の取消しの義務付けを求める訴えにつき,前記住民らの住所地と同施設との距離は,最も離れた者で約165メートルであり,一部の者は,生活用水として井戸水を使用し,又は農業用水として同施設に隣接するため池の水を使用しているところ,同施設の設置者に適切な業務運営等が期待できないなどの事情により,前記処分を取り消すべき事由が存在するにもかかわらず,それが放置される場合には,高い毒性を有するダイオキシン類等の有害物質に汚染された大気及び水が,前記住民らの生命及び健康に損害を生じさせるおそれがあり,このような損害は,その性質上,回復が著しく困難であるとして,前記訴えは,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「重大な損害を生ずるおそれ」の要件を満たすとした事例
3 県知事がした産業廃棄物処理施設設置許可処分の取消しの義務付けを求める訴えにつき,取消訴訟に係る出訴期間の経過によって同処分の効力を争い得なくなった後においても,廃棄物の処理及び清掃に関する法律又はその関連法令に違反する事情が生じ,同処分を取り消すべき事由が存在するにもかかわらず,それが放置される場合に周辺住民らの生命及び健康に生ずるおそれのある損害は,事後的な金銭による回復に委ねることが相当でない性質のものであるから,前記処分の取消しを義務付ける他に,かかる損害を避けるための適当な方法は見当たらず,また,前記施設の設置者に対して,民事上の差止め請求等をすることが可能であるとしても,実効的な権利救済という見地から,救済手段としての義務付けの訴えを排除すべきではないとして,前記訴えは,行政事件訴訟法37条の2第1項にいう「その損害を避けるため他に適当な方法がないとき」の要件を満たすとした事例
4 産業廃棄物処理施設の周辺住民らによる,県知事が廃棄物の処理及び清掃に関する法律15条の3第1項1号に基づき同施設設置許可の取消しをすることの義務付け請求につき,前記施設を設置する法人の訴訟代理人を務め,その後,禁錮以上の刑に処せられた弁護士が同法人の事業基盤の形成,役員選任及び資金調達等に深く関与し,同法人の臨時株主総会等の開催場所として自らが経営する法律事務所を提供した上,これらの会に出席するなど,同法人の取締役と同様の関わり方をしていたことがうかがわれること,また,同法律事務所の事務員を同法人の代表取締役に就任させるなどして,同人を介して少なくとも取締役と同等以上に同法人の業務上の意思決定に関与していたものと認められること等からすれば,同弁護士は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条5項4号ニ所定の「取締役と同等以上の支配力を有するものと認められる者」に該当し,県知事は,同法15条の3第1項1号に基づき,同施設設置許可処分を取り消すべき義務を負うとして,前記請求を認容した事例

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