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行政事件 裁判例集

事件番号

 平成23(行コ)35

事件名

 住民訴訟控訴事件(原審・名古屋地方裁判所平成18年(行ウ)第80号)

裁判年月日

 平成25年1月31日

裁判所名

 名古屋高等裁判所

分野

 行政

判示事項

 市議会の会派が,市から交付された政務調査費のうち,所属議員らに個人経費分として支給したとする金額から同会派が市に返還した金額を控除した残額を不当に利得しているとして,市の住民らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対し,前記会派の権利義務を承継した新会派に前記残額と同額の不当利得金の返還請求をするよう求める請求が,一部認容された事例

裁判要旨

 市議会の会派が,市から交付された政務調査費のうち,所属議員らに個人経費分として支給したとする金額から同会派が市に返還した金額を控除した残額を不当に利得しているとして,市の住民らが,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,市長に対し,前記会派の権利義務を承継した新会派に前記残額と同額の不当利得金の返還請求をするよう求める請求につき,政務調査費は,広範な職責を有する普通地方公共団体の議会の議員活動を実効あらしめるために,その調査研究のための費用を助成する趣旨,目的のものであること,議員による調査研究活動は,一般に外部から容喙されるべきものではないから,政務調査費の支出の適法性の判断は,原則として自律的な判断に委ねられるべきであるが,他方で,これが公費を原資としていることに照らすと,収支の状況はできるだけ透明性を確保することが望ましいこと,政務調査費の交付を受けた会派が本来の使途及び目的に反する支出をした場合,市長は,当該不適切な支出に相当する額の返還を求めることができること,その返還請求権は不当利得返還請求権の性質を持つと解されるから,一般的な主張立証責任の分配法則に従い,政務調査費の返還を請求する側において,返還を求める政務調査費の支出が「市政に関する調査研究に資するために必要な経費」の支出に当たらないことの主張,立証責任を負うことになること,返還を請求する側において,相応の根拠をもって当該会派の提出した収支報告書の記載内容が正確でないことを主張立証し,当該政務調査費の支出が本来の趣旨・目的に沿ったものでないとの疑いを生じた場合には,返還を求められている会派側において,政務調査活動の秘匿性の要請に抵触しない限度で政務調査費の支出状況を明らかにすべきであり,そのような最低限度の説明責任さえ果たさない場合には,返還義務を免れないこと,当該会派が政務調査活動の秘匿性の要請に抵触しない限度で支出状況を明らかにした場合でも,返還を請求する側が,具体的な政務調査費の支出が本来の使途及び目的に反した支出であることを推認させる外形的事実を主張立証したときには,会派側において,当該政務調査費の支出が本来の使途及び目的に適うものであることを立証しない限り,返還義務を免れないこと,以上のように解するのが相当であるとした上で,前記会派の支出のうち,前記会派所属議員提出に係る政務調査費の支出の概要を記載した陳述書の提出がなかった議員に支給された政務調査費については,基本的な説明責任が果たされていないとして直ちにその全額を不当利得として返還すべきと判断するのは相当でなく,その可否は,あくまでも返還を請求する側において,不適切な使途に充てられたことを推認させるに足りる具体的な外形的事実を主張立証できたかに掛かるというべきであり,前記陳述書に記載された支出のうち,事務所の借り上げ費については,名古屋市会政務調査費の使途基準及び収支報告書の閲覧に関する規程(平成13年名古屋市会達第1号)において基本的に政務調査費の支出対象としては想定されていないところ,事務所の借上げが調査研究活動の実施に不可欠であることをうかがわせる具体的な事情について何ら明らかにされていないことからすれば,前記事務所借上げ費相当額については,「市政に関する調査研究に資するため必要な経費」として支出したものには当たらないから,前記会派は同金額を市に返還する義務を負うなどとして,前記請求を一部認容した事例

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