メニューを飛ばす


裁判所トップページ > 各地の裁判所 > 東京地方裁判所・東京家庭裁判所 > 東京地方裁判所・東京家庭裁判所について > 広報活動 > 東京家庭裁判所広報誌第4号(平成20年1月発行) > 家裁豆知識4(相続放棄)


家裁豆知識4

相続放棄について

<相続放棄とは>

 ある人が死亡した場合,その死亡した人(以下「被相続人」といいます。)が有していた権利義務は,被相続人のみに専属的な権利(身分関係に基づいて扶養を受ける権利など)を除き,その人の相続人に包括的に承継されます(民法896条)。けれども,相続人の中には,正負どちらの財産であれ,承継を望まない人もあるでしょう。そこで民法は,一定の要件を満たす相続人に対して,相続財産(通常は,正負どちらも含めた意味で使いますが,ここでは,正の相続財産のみを指す言葉として使います。)も,相続債務(ここでは,負の相続財産を指す言葉として使います。)も,その承継を全面的に拒否することを認めています。これを相続放棄といいます。

<相続放棄はどのようにするか>

 相続放棄は,(1)相続人自身が,(2)自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間)以内に,(3)家庭裁判所に相続放棄の申述をすることによって認められます。

<相続放棄はいつまですることができるか>

 (1)について,相続人が幼少・高齢などの理由で,相続放棄の意味すら判断できないような場合にどうするかですが,その相続人の法定代理人(親権者,成年後見人等)が相続放棄の手続を行えばよく,熟慮期間も,その法定代理人が相続人のために相続の開始があったことを知った時から起算されます(民法917条)。
 (2)について,熟慮期間の起算点である「自己のために相続の開始があったことを知った時」とはいつかが問題ですが,最高裁判所は,原則として,相続人が(a)相続開始の原因となる事実(被相続人の死亡等)及び(b)これにより自分が法律上相続人になった事実を知った時である,とする一方,3か月以内に相続放棄等をしなかった場合でも,例外的に,それが相続財産・債務が全くないと信じたためであり,かつそう信じたことに相当な理由がある場合には,相続財産・債務の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識できる時から起算するとの判断を示しています(昭和59年4月27日判決民集38巻6号698頁)。つまり,原則として相続開始の事実及び自己が相続人となった事実を知った時から起算するのであり,相続財産・債務に対する認識の有無は熟慮期間の起算点と無関係であるけれども,相続財産・債務は全くないものと誤信していたために相続放棄の手続きを取る必要がないと考えて熟慮期間を過ぎてしまったような場合には,誤信したことにつき過失がないことを条件に,起算日を相続財産・債務を認識した時又は認識することが可能であった時まで繰り下げる,というものです。誤信の対象は,「相続債務がないこと」ではなく,「相続財産・債務ともにないこと」ですから,例えば,相続人が,相続開始の事実及び自己が相続人となった事実を知った時,相続財産として被相続人の自宅不動産があることを知っていたような場合には,たとえ相続債務の存在を知らなくても,原則どおりに熟慮期間が起算されますので,注意が必要です。

<相続放棄はどこですることができるか>

 (3)について,相続放棄の申述をすべき家庭裁判所ですが,被相続人の住所地又は相続開始地を管轄する家庭裁判所に申述をすることになります(家事審判規則99条1項)。相続放棄の申述は,郵送によることも可能です。

<相続放棄ができない場合があるか>

 なお,熟慮期間内であっても,相続人が相続財産を処分するなど,一定の行為があった場合は,相続財産・債務の全面的な承継を認めたものとみなされ(法定単純承認,民法921条),以後,相続放棄をすることはできなくなります。

<相続放棄をするとどうなるか>

 相続放棄の申述が認められると,相続人は,その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとして扱われます(民法939条)。したがって,被相続人に配偶者(A)及び子(B,C,D)があった場合,配偶者(A)が相続放棄すれば,最初から配偶者がいない場合の相続と同じになり,子(B,C,D)の相続分は各3分の1となります。子(B,C,D)も揃って相続放棄した場合には,被相続人の両親(甲,乙)が健在であればこの人たちが新たに相続人となります。このとき,両親(甲,乙)の熟慮期間の起算点は,子ら全員が相続放棄したことを知った時になります。両親(甲,乙)も相続放棄した場合,被相続人に兄弟,姉妹(又はその子)がいれば,その人たちが相続人となります。

相続放棄についてイメージ