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知的財産権法に基づく請求等の訴額の算定基準

平成28年10月1日

 東京地方裁判所の知的財産権部に係属する知的財産権法に基づく請求等の訴額の算定方法の原則的な取扱いは以下のとおりです。

 ※ 侵害行為の差止めとともに侵害行為を組成する物の廃棄等を請求する場合(特許法100条2項,実用新案法27条2項,意匠法37条2項,商標法36条2項,不正競争防止法3条2項,著作権法112条2項,半導体集積回路の回路配置に関する法律22条2項,種苗法33条2項)には,差止請求の訴額のみによる。

 ※ 「残存年数」,「請求可能年数」については,月単位まで計算する。

 ※ 計算の根拠とする金額,料率,年数等の数値は原則として資料によって疎明する必要があるが,年間売上高・利益率等については疎明資料は不要で,訴額計算書を提出すれば足りる。

1 特許権,実用新案権,意匠権

(1) 権利の帰属の確認請求,移転登録手続請求

ア 次のいずれかによる。

(ア) 訴え提起時の年間売上高×訴え提起時の利益率×権利の残存年数×4分の1(低減率)

(イ) 原告が,鑑定評価書等により,権利の評価額,取引価格を疎明したときは,その額による。

イ 権利の範囲全部につき専用実施権が設定されている場合には,次のいずれかによる。

(ア) 訴え提起時の実施権者の年間売上高×実施料率×権利の残存年数×4分の1

(イ) (年間実施料×権利の残存年数)-中間利息

(2) 実施権の確認請求,設定登録手続請求,移転登録手続請求

 実施権者の年間売上高(又は予想年間売上高)×訴え提起時の実施権者の利益率×実施権の残存年数×4分の1

(3) 抹消登録手続請求

 (1),(2)の算定結果×2分の1

(4) 質権の設定・移転・変更・消滅に関する登録手続請求

 不動産を目的とする担保権に関する登記手続請求の算定方法を準用する。

(5) 差止請求

 次のいずれかによる。

ア 原告の訴え提起時の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×権利の残存年数×8分の1

イ 被告の訴え提起時の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×権利の残存年数×8分の1

ウ (年間実施料相当額×権利の残存年数)-中間利息

(6) 差止請求権の不存在確認請求

 原告の訴え提起時の年間売上高×原告の訴え提起時の利益率×被告の権利の残存年数×8分の1

(7) 信用回復措置の請求

 信用回復のための広告等その措置に要する費用が認定できる場合はその額とし,措置の性質上,要する費用が認定できない場合,又は,算定が著しく困難な場合は160万円とする。

2 商標権

(1) 権利の帰属の確認請求,移転登録手続請求

ア 次のいずれかによる。

(ア) 訴え提起時の年間売上高×訴え提起時の利益率×10年×5分の1

(イ) 原告が,鑑定評価書等により,権利の評価額,取引価格を疎明したときは,その額による。

イ 権利の範囲全部につき専用使用権が設定されている場合には,次のいずれかによる。

(ア) 訴え提起時の専用使用権者の年間売上高×使用料率×10年×5分の1

(イ) 年間使用料×10年×0.8

(2) 使用権の確認請求,設定登録手続請求,移転登録手続請求

 訴え提起時の使用権者の年間売上高×訴え提起時の使用権者の利益率×使用権の残存年数×5分の1

 ただし,使用権の残存年数が10年以上の場合,又は,使用権設定契約の更新等により使用権が訴え提起時から10年以上継続する可能性が高い場合には,「使用権の残存年数」は10年とする。

(3) 抹消登録手続請求

 (1),(2)の算定結果×2分の1

(4) 質権の設定・移転・変更・消滅に関する登録手続請求

 不動産を目的とする担保権に関する登録手続請求の算定方法を準用する。

(5) 差止請求

 次のいずれかによる。

ア 原告の訴え提起時の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×10年×10分の1

イ 被告の訴え提起時の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×10年×10分の1

ウ 年間使用料相当額×10年×0.8

(6) 差止請求権の不存在確認請求

 原告の訴え提起時の年間売上高×原告の訴え提起時の利益率×10年×10分の1

(7) 信用回復措置の請求

 信用回復のための広告等その措置に要する費用が認定できる場合はその額とし,措置の性質上,要する費用が認定できない場合,又は,算定が著しく困難な場合は160万円とする。

3 不正競争防止法に基づく請求

(1) 不正競争防止法2条1項1号,2号,16号の不正競争行為の差止請求

 次のいずれかによる。

ア 訴え提起時の,原告の原告表示を使用した商品,営業,役務の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×10年×10分の1

イ 訴え提起時の,被告の被告表示を使用した商品,営業,役務の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×10年×10分の1

ウ 原告表示の年間使用料相当額×10年×0.8

(2) 不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為の差止請求

 次のいずれかによる。

ア 訴え提起時の,原告の原告商品の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×請求可能年数×6分の1

イ 訴え提起時の,被告の被告商品の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×請求可能年数×6分の1

ウ 原告商品形態の年間使用料相当額×請求可能年数×0.9

 ただし,アないしウの「請求可能年数」とは,訴え提起時から,同号所定の「他人の商品」に該当する原告商品が最初に販売された日から3年後の日までの期間をいう。

(3) 不正競争防止法2条1項4号ないし10号の不正競争行為の差止請求

 当該営業秘密の性質上アないしウのいずれかの方法により算定できるものは,アないしウのいずれかの方法により,算定できないもの,又は,算定が著しく困難なものは160万円とする。

ア 訴え提起時の,被告の当該営業秘密の使用等による原告の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×8年×8分の1

イ 訴え提起時の,被告の当該営業秘密の使用等による年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×8年×8分の1

ウ 当該営業秘密の年間使用料相当額×8年×0.8

(4) 不正競争防止法2条1項11号,12号の不正競争行為の差止請求

 原告の訴え提起時の年間売上高減少額×原告の訴え提起時の利益率×8年×8分の1

(5) 不正競争防止法2条1項13号の不正競争行為の差止請求

 次のいずれかによる。

ア 訴え提起時の,被告ドメイン名使用による原告の商品,営業,役務の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×10年×10分の1

イ 訴え提起時の,被告ドメイン名使用による商品,営業,役務の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×10年×10分の1

ウ ア又はイにより算定できない場合,又は,算定が著しく困難な場合は,160万円とする。

(6) 不正競争防止法2条1項14号の不正競争行為の差止請求

 次のいずれかによる。

ア 訴え提起時の,被告表示の使用による原告の商品,営業,役務の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率×10年×10分の1

イ 訴え提起時の,被告の被告表示を使用した商品,営業,役務の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率×10年×10分の1

(7) 不正競争防止法2条1項15号の不正競争行為の差止請求

 160万円とする。

(8) 不正競争防止法14条に定める信用回復措置の請求

 信用回復のための広告等その措置に要する費用が認定できる場合はその額とし,措置の性質上,要する費用が認定できない場合,又は,算定が著しく困難な場合は160万円とする。

(9) 不正競争防止法19条2項に定める請求

 160万円とする。

4 著作権

(1) 権利の帰属の確認請求,移転登録手続請求

ア 著作権の帰属の確認請求,移転登録手続請求

原告の訴え提起時の年間売上高×原告の訴え提起時の利益率

イ 出版権の確認請求,設定登録手続請求,移転登録手続請求

(ア) 取引価格による

(イ) 取引価格が明らかでない場合は,原告の訴え提起時の年間売上高×原告の訴え提起時の利益率

(2) 抹消登録手続請求

 (1)のア,イの算定結果×2分の1

(3) 質権の設定・移転・変更・消滅に関する登録手続請求

  不動産を目的とする担保権に関する登記手続請求の算定方法を準用する。

(4) 実名・第一発行年月日等・創作年月日の抹消登録手続請求

 160万円とする。

(5) 著作権法上の権利に基づく差止請求

ア 著作権(著作財産権)に基づく差止請求

次のいずれかによる。

(ア) 原告の訴え提起時の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率

(イ) 被告の訴え提起時の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率

(ウ) 著作権者が通常1年間に受けるべき金銭の額

イ 著作者人格権に基づく差止請求

160万円とする。

ウ 出版権に基づく差止請求

次のいずれかによる。

(ア) 原告の訴え提起時の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率

(イ) 被告の訴え提起時の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率

エ 著作隣接権に基づく差止請求

アと同様に算定する。

(6) 著作者人格権侵害の場合の名誉回復措置の請求

 名誉回復のための広告等その措置に要する費用が認定できる場合はその額とし,措置の性質上,要する費用が認定できない場合,又は,算定が著しく困難な場合は160万円とする。

5 商号権

(1) 差止請求

 (当事者双方が会社の場合)

 基準額×修正率=訴額

  ただし,この計算式によって求めた訴額が,直近下位の基準額の範囲で求められる訴額の最高額に満たないときには,その最高額と同一の額を訴額とする。

ア 基準額

(ア) 原告会社の資本額≧被告会社の資本額の場合

基準額=被告会社の資本額×2

(イ) 原告会社の資本額<被告会社の資本額の場合

基準額=原告会社の資本額×2

イ 修正率

5分の1(基準額≦1000万円)

7分の1(1000万円<基準額≦5000万円)

10分の1(5000万円<基準額≦1億円)

20分の1(1億円<基準額≦3億円)

30分の1(3億円<基準額≦5億円)

50分の1(5億円<基準額)

 (当事者の双方又はいずれか一方が会社でない場合)

 次のいずれかの計算式による。

(ア) 原告の訴え提起時の年間売上減少額×原告の訴え提起時の利益率

(イ) 被告の訴え提起時の年間売上推定額×被告の訴え提起時の推定利益率

(2) 商号登記の抹消登記手続請求

 (1)と同様に算定する。

6 半導体集積回路の回路配置に関する法律に基づく請求

 特許権の場合に準じて算定する。

7 種苗法に基づく請求

 特許権の場合に準じて算定する。

8 行政訴訟

 160万円とする。

 ただし,当事者訴訟等訴額の算定が可能な場合には,その方法により算定する。

 以上