裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和25(あ)3098
- 事件名
所得税法違反、失業保険法違反
- 裁判年月日
昭和28年1月27日
- 法廷名
最高裁判所第三小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
その他
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第7巻1号64頁
- 原審裁判所名
名古屋高等裁判所 金沢支部
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和25年10月31日
- 判示事項
一 罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められている場合においては罰金の寡額の引上は罰金等臨時措置法第二条第一項によるのか
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつた場合における供述調書の証拠能力
三 公法関係において債務の一部弁済があつた場合民法第四八九条を適用するのは相当か
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益中には刑事上の責任の有無を含むか
五 前任者が控除した失業保険料を所定期日までに納付しなかつた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
六 自ら保険料を控除した者であつても所定の納付期日にはその地位を去つた者について失業保険法第五三条第三号の罪が成立するか
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日の意義
八 失業保険法第五五条の規定により法人が責任を負う場合において行為者が異るときは公訴事実も異なるか
- 裁判要旨
一 特別法であつても、罰金の寡額が刑法第一五条によつて定められる場合には、その寡額の引上は、罰金等臨時措置法第四条によるのではなく、同法第二条第一項の規定によるものである。
二 検察官が供述調書を作成する際にこれを供述者に読み聞けなかつたとしても、その一事のみによつて供述調書がただちに証拠能力を失うことにはならない。
三 債務の一部弁済があつた場合に特段の規定または合意のないかぎりは、公法関係においても民法第四八九条の規定に従うものと解するのが相当である。
四 民法第四八九条第二号の弁済の利益は、財産上の利益を指称し、刑事上の責任の有無を含まない。
五 失業保険法第五三条第三号は、自ら保険料を控除した者が、これを所定期日までに納付しなかつた場合はもとより、その前任者が控除したことを知りながら、所定期日までに納付しなかつた者をも処罰するものと解すべきである。
六 自ら失業保険料を控除した者であつても、所定の納付期日にはこれを納付すべき地位を去つた者については、失業保険法第五三条第三号の罪は成立しない。
七 失業保険法第三四条(改正前のもの)、同法施行令第一〇条にいわゆる翌月末日とは、それが前月の遅延分であつても、実際に失業保険料を控除した日から起算して翌月末日と解すべきである。
八 失業保険法第五五条の規定により会社が従業者等の違反行為につき責任を負うべき場合において、責任を負うべき従業者等が異る場合においては、会社についても公訴事実を異にするものと解すべきである。
- 参照法条
罰金等臨時措置法2条1項,罰金等臨時措置法4条,刑訴法198条4項,刑訴法223条,刑訴法312条,刑訴法256条,民法489条,失業保険法53条,失業保険法34条(改正前のもの),失業保険法55条,失業保険法施行令10条
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