裁判例結果詳細
最高裁判所判例集
- 事件番号
昭和25(あ)692
- 事件名
酒税法違反
- 裁判年月日
昭和25年10月12日
- 法廷名
最高裁判所第一小法廷
- 裁判種別
判決
- 結果
棄却
- 判例集等巻・号・頁
刑集 第4巻10号2073頁
- 原審裁判所名
仙台高等裁判所
- 原審事件番号
- 原審裁判年月日
昭和25年2月14日
- 判示事項
一 酒税法の犯則者に対して刑罰を科する趣旨と刑法第四八条第二項の適用の排除
二 昭和二四年法律第四三号による改正前の酒税法第六六条と懲役及び罰金を併科する場合の刑法第四八条の適用の有無
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏の告発は犯罪の処罰要件か――右告発についての証拠説明の要否
- 裁判要旨
一 従来酒税法でその犯則者に対して刑罰を科するおもなる趣旨は犯則によつて国に財政上の損失を生ぜしめないことを担保するにあるから、その刑罰も純然たる刑事犯と異り犯人の責任年齢、心神の状態、法の不知等の主観的条件を顧慮せずに各犯罪行為を客観的、数理的に考察して、罰金科料等の金刑だけを脱税額の倍数を以て決定し自由裁量を許さない建前を執つたのである。されば犯則者には例外なく刑法第四八条二項の規定を適用しない旨規定されていたのである(明治二九年法律第二八号酒税法第三一条、昭和一五年法律第二五号酒税法第六六条参照)。
二 昭和二四年法律第四三号酒税第六六条「第六〇条第一項………ノ罪ヲ犯シタル者ニハ刑法………第四八条第三項………ノ規定ヲ適用セズ但シ第六〇条第二項………ノ場合ニ於テ懲役ノ刑ニ処スルトキハ此ノ限ニ在ラズ」の規定は同法の犯則者に対して懲役と罰金科とを併する場合にも罰金刑については従前通り各犯罪行為ごとに罰金刑を科すべく刑法第四八条二項の規定を適用しない趣旨と解するのを相当とする。
三 酒税法の犯則者に対して当該税務官吏から告発をなすことは訴訟要件ではあるが、酒税法違反罪の構成要件ではないから、受訴裁判所は告発が適法になされているか否かを審査しなければならぬことはいうまでもないところであるが、裁判所は公判廷において告発に関する書類被告人に読みきけ、その意見を聴く等これが証拠調をしたり、告発のありたることを判決に示しその証拠を説明すべき法律上の義務は裁判所に存しない。されば論旨は当該税務官吏のなす告発を犯罪の処罰要件と誤解せるに基くものであつてとるをえない。そしてかかる論旨は明らかに刑訴第四〇五条に定める上告理由たる事由にあたらない。
- 参照法条
昭和24年法律43号による改正前の酒税法60条,昭和24年法律43号による改正前の酒税法66条,刑法48条2項,刑訴法338条4号,刑訴法335条,刑訴法405条
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