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最高裁判所判例集

事件番号

 平成6(オ)1130

事件名

 損害賠償

裁判年月日

 平成8年9月3日

法廷名

 最高裁判所第三小法廷

裁判種別

 判決

結果

 棄却

判例集等巻・号・頁

 集民 第180号205頁

原審裁判所名

 東京高等裁判所

原審事件番号

 平成4(ネ)2312

原審裁判年月日

 平成6年2月24日

判示事項

 県立精神病院に措置入院中の精神分裂病患者が院外散歩中に無断離院をして金員強取の目的で通行人を殺害したことについて病院の院長、担当医師、看護士らに無断離院を防止すべき注意義務を尽くさなかった過失があるとされた事例

裁判要旨

 県立精神病院に措置入院中の精神分裂病患者甲が、作業療法の一環として実施された院外散歩中に無断離院をし、離院中に金員強取の目的で通行人を殺害したことについて、甲は、精神分裂病のため社会的適応機能が著しく低下し、銃砲刀剣類所持等取締法違反、窃盗、公務執行妨害等の犯罪を繰り返して服役し、服役終了と同時に他害のおそれがあるとして措置入院となり、入院後は、作業療法実施中に病院内の自動車を盗んで無断離院をし、離院中に窃盗をしたり叔父に対して暴行を加えたりし、その後も無断離院を口にするなどしていたが、病院の院長は、無断離院のおそれのある患者に院外散歩を含む作業療法を実施するについての特別の看護態勢を定めず、担当医師も、甲を院外散歩に参加させるに当たり、引率する看護士らに何ら特別な指示を与えず、引率した看護士らも、院外散歩中甲に対して格別な注意を払わなかったなど判示の事実関係の下においては、院長、担当医師、看護士らに甲が無断離院をして他人に危害を及ぼすことを防止すべき注意義務を尽くさなかった過失がある。

参照法条

 国家賠償法1条,民法709条

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